おやぢの部屋2
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MOZART/Donna
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Diana Damrau(Sop)
Jérémie Rhorer/
Le Cercle de l'Harmonie
VIRGIN/50999 212023 2 2



前作Arie di Bravuraに続くVIRGINでのダムラウの2作目のアルバムです。タイトルは、「Donna」。「プリマ・ドンナ」は主演女優ですから、「ドンナ」というのは「女優」というか、女性の出演者のことですね。いったい、どんなキャラクターを演じてくれているのでしょう。
ところで、このジャケットの写真、前作の写真とはまるで別人のようなイメージを与えられませんか?前回はとても若々しいイメージだったものが、今回は「年増の魅力」というか、ちょっとおばさんっぽいのが気になります。ヘアスタイルなどのほんのちょっとした具合で、これほどまでに外見が変わってしまうものなのですね。そんなダムラウがここで試みているのは、モーツァルトのオペラに登場する全く異なるキャラクターを、一人で演じてしまう、というものでした。一般的にはオペラ歌手というものは、音色やテクニックによってある特定の役柄しか歌えないものだ、ということになっているそうなのです。ソプラノの場合は「レッジェロ」や「リリコ・スピント」、「ドラマティコ」などに分類されていますが、「魔笛」の「夜の女王」で強烈な印象を与えてくれたダムラウは、ですから、そのような高音のコロラトゥーラを専門に歌う「レッジェロ」というソプラノにカテゴライズされてしまってもおかしくはありません。しかし、彼女はそんな既成概念にとらわれることはなく、もっと幅広いキャラクターに挑戦しているのです。その「夜の女王」にしても、彼女の場合ただ高音の超絶技巧を聴かせるだけのものではなかったことを思い出しているところです。特に第1幕のアリアはかなり低い音も要求される難しいものですが、彼女はそこで堂々たる「女王」の貫禄を示していたものでした。ですから、その時点でこんなアルバムが出ることはある程度予想されていたのです。
「フィガロの結婚」では、伯爵夫人とスザンナという、2役を聴くことが出来ます。例えばアンネッテ・ダッシュあたりも、両方の役をレパートリーにしていますが、実際に聴いてみて彼女の伯爵夫人はちょっと無理があるような印象を持ったものです。しかし、ダムラウのコンテッサの深みは、本物です。もちろん、スザンナの初々しさも、しっかり伝わってきます。
そのあたりのキャラクターの区別は、もちろん声の質だけによるものではないことが、「後宮」でのブロンデとコンスタンツェの見事な歌い分けからも明らかになります。ここで彼女は、言葉の勢いなども含めて、すべての面で完璧にそれぞれの役柄を演じ分けているのです。「ドン・ジョヴァンニ」ではドンナ・アンナとドンナ・エルヴィラしか歌っていませんが、おそらくツェルリーナだってきちんと歌うことはできるのでしょうね。
録音されたのは今年の1月、前作が2006年の12月ですから、ほぼ1年のインターバルでの新作と言うことになります。共演は同じ「ル・セルクル・ド・ラルモニー」というフランスのオリジナル楽器のバンドです。この「ハーモニーの環」という、2005年にジェレミー・ロレルによって創設された団体は、18世紀後半に活躍した作曲家サン・ジョルジュが作ったオーケストラの名前を現代に蘇らせたものなのですね。ただ、このバンド、たった1年しか経っていないのに、メンバーはかなり入れ替わっています。コアのメンバーだけを残して、あとは適宜ソリスト級の人が参加する、という形態なのかもしれません。というのも、前作同様、ライナーにはオブリガートなどを演奏しているパーソネルのクレジットがあって、それによると木管などは2人の奏者の双方が、それぞれ別の曲でトップを吹いているのが分かるからです。フルートなどはかなり音色の違う人のようで、それぞれの個性に合わせた起用ができるという贅沢な陣容のようでした。そう、ここでは伴奏のオケまでもが「歌い分け」をやっていたのです。
by jurassic_oyaji | 2008-10-25 23:02 | オペラ | Comments(0)