おやぢの部屋2
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カラヤンの「ラインの黄金」
 最近は、テレビといえばドラマばかり見ていて、音楽ものはなかなか見ることがなくなっています。N響のライブなど、まさにハードディスクの「肥やし」になってしまっています。DVDに保存しておくほどのものでもないので、さっさと見て削除してしまいたいのですが、そんな時間があったらたまったドラマを見ていた方がよいので、なかなか空き時間は増えることがありません。
 そんな中で、最近2本ほど面白いものを見ることが出来ました。一つは今年のベルリン・フィルのヨーロッパ・コンサート。モスクワ音楽院のホールという、なかなか面白い形をした(シューボックスなのに、プロセニアムがある)会場での演奏、曲目もロシア物かと思いきや、最初だけストラビンスキーの「3楽章の交響曲」だっただけで、あとはブルッフとベートーヴェンでした。そのメインが7番だったのですが、ここでラトルはなんだか見慣れない楽器を使っていました。コントラファゴットが2本も追加されていたのですよ。ベーレンライター版の楽譜を見てみても、この曲にコントラファゴットが使われることはありませんから、これはラトルのアイディアなのでしょうか。と思いながら、ネットを調べてみたら、これはベートーヴェンが8番を初演した時に用いた編成だったことが分かりました。コントラが入るようなばかでかい編成で、ピアノとフォルテの対比を付けたのだそうです。この時に一緒に演奏されたのが、3回目か4回目のステージとなる7番だったので、ラトルはこの「故事」にのっとって、コントラを加えたのですね。でも、ベートーヴェンでコントラが2本並んでいるのはいかにも異常、その8番の初演の時には木管は全部倍管だったのですが、このベルリン・フィルは各パート1本だけ、そこにコントラだけ2本入れてもあまり意味がないような気はしますがね。
 もう一つは、このところ集中的に放送されているカラヤンの映像の中で、まだ見たことのなかった「ラインの黄金」です。これは、色んな意味で本当に興味深い物でした。まず、録音が、CDで出ているものとは別、もう少し後にザルツブルクで行われたものなのだそうです。CDの「リング」では、もっとも後の「黄昏」でも1969年の録音ですから、ゴールウェイはかろうじてこの「黄昏」だけには乗っていて、その音を聴くことが出来るのですが、もちろんそれ以外は別の人でした。ところが、ここでは明らかにゴールウェイらしい、芯の通ったフルートが聞こえるので、調べてみたらやはりそうでしたね。
 その音に合わせて、映像は後に撮影されていますから、中には歌っているのとは別の歌手が演じていることもあって笑えますが、ローゲ役のシュライヤーは、絶対にシュライアーには見えないメークで登場していても彼自身でした(このシュライアーの歌は絶品)。もちろん、カラヤンが監督をしているのですが、その面白さといったら、つまり、カラヤンには指揮者の才能はあっても映画監督の才能は全くなかったことがはっきり分かってしまうのですからね。彼がやっているのは、完璧にスコアの指示を忠実に映像に直すことだけだったのです。これほど音楽と演技がシンクロしている映画もないことでしょう。「ライン川」といえば川の映像ですし、「小人」といえば、本物の「小さい人」が出てくるのですからね。その結果、映画としてはまさにB級の安物SFのような物になってしまっています。そこには、クリエーターとしてのひらめきは、なにも感じることは出来ません。もっとも、これには彼の他の映像作品に比べて際立った長所があります。それは、カラヤン自身の映像が全く登場することがない、ということです。
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by jurassic_oyaji | 2008-10-30 20:34 | 禁断 | Comments(0)