おやぢの部屋2
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MOZART/Requiem
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Sheila Armstrong(Sop), Janet Baker(MS)
Nicolai Gedda(Ten), Dietrich Fischer-Dieskau(Bar)
Daniel Barenboim/
John Alldis Choir
English Chamber Orchestra
EMI/212953 2



モーツァルトのレクイエムだったら、新録音でなくてもまだ聴いたことのないものがバジェット・プライスで出たりすれば、とりあえず買ってみるのがお約束。ブルックナーの「テ・デウム」とのカップリングで1300円なら、まずはお買い得でしょうし(もっとも、ブルックナーは別のコンピですでに持っていましたが)。
1971年のEMIの録音ですから、そんなに期待はしていませんでしたが、聴き始めてみると、そのインパクトのある音には軽いショックを受けてしまいました。何よりも、ヴァイオリンの高音をめいっぱい強調したその異常とも言えるバランスには、完全に圧倒されてしまいました。そして、こんな、今となってはとても不自然だけど、耳を惹きつけずにはおかないような録音にごく最近出会っていたことを思い出しました。それは、必要に迫られて演奏者もレーベルも全く考慮しないで買ったラフマニノフの交響曲第2番のCDなのですが、そのプレヴィン指揮ロンドン交響楽団の1972年のEMI録音と、これは非常によく似た音の作り方だったのです。ラフマニノフの場合は、オープニングの低弦のキャラの立ち方から、そのテンションは際だっていました。
予想通り、モーツァルトもラフマニノフも、バランス・エンジニアは同じロバート・グーチRobert Goochという人でした。どうやらこの人は、1950年台後半から1970年台のロンドンでのEMIの録音を一手に担当していたようですね。ですから、古くはカラヤンとフィルハーモニア管弦楽団、そして、クレンペラーの録音などもかなりこの人の手になるものがあったようです。言われてみれば、クレンペラーの録音などはかなりメリハリのきいた音だったような気がします。
そんなグーチによって録音されたバレンボイムのレクイエムは、その演奏がまさにこのベタベタにデフォルメされた録音と見事なマッチングを見せていました。何と言っても、バレンボイムのメリハリの付け方がハンパではありません。「Requiem」の出だしなどはかなり淡々と始まったと思っていたら、弦楽器の最後のフレーズごとに確実にテンションを上げていく、というかなりあざとい盛り上げ方によって、とてつもないクライマックスを作り上げているのですからね。その瞬間のヴァイオリンのまるで松ヤニが飛び散るような高音のきしみや、合唱の、喉も張り裂けんばかりの叫びはグーチの録音によってさらに力強いインパクトとなって迫ってくることになるのです。「Dies irae」などは、のっけからのハイテンション、なんの準備もなしに聴いたら、腰を抜かしてしまうかもしれません。
ジョン・オールディス合唱団にしてもイギリス室内管弦楽団にしてもそんなに大人数の団体ではないはずなのですが、この録音のマジックによってそこからはまるでマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」(「4人の交響曲」じゃないですよ)のような大げさな姿が眼前に広がります。
ソリストたちも、そんな超重量級のオーケストラ(あくまで録音の上で、ですが)とガチンコで渡り合えるようなファイターが揃っています。フィッシャー・ディースカウは重みこそありませんが、その深刻な表現はとても深~い世界観を持っていますし、ゲッダの殆どイタリア・オペラと変わらない立派な押し出しはどうでしょう。そこにベイカーの存在感が加わるのですから、アームストロングでさえちょっと控えめに聞こえてしまうほどです。その4人がタッグを組んだ「Tuba mirum」にかなうものなんて、ありません。
そんな大げさな演奏と、生音からはほど遠いギラギラに高音と低音が強調された録音、1970年台というのは、そういうものが受け入れられていた時代だったのですね。そんなものにも冷静に「歴史」として向き合えるこの時代、それを不幸せと感じる人は、少なくはないはずです。
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by jurassic_oyaji | 2008-11-04 20:17 | 合唱 | Comments(2)
Commented by ROYCE at 2008-11-06 23:11 x
昔のCDを持ってますが高音の強調感は感じません。
リマスタリングを担当したエンジニアの趣味ということはないでしょうか?
Commented by jurassic_oyaji at 2008-11-06 23:44
ROYCEさん、コメントありがとうございます。

確かに、リマスタリングで音がより刺激的に変わることはあるようですね。
でも、この録音は、そもそものマイクのセッティングなどが、個々の楽器を強調するようなものだったような気がします。