おやぢの部屋2
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Pictures from Russia
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Hansjörg Albrecht(Org)
OEHMS/OC 632(hybrid SACD)



オルガンの可能性を追求してやまないアルブレヒトの、新しいアルバムです。以前ワーグナーの「指環」に挑戦したときに使用したキールの聖ニコライ教会の2台のオルガンによって演奏されています。前にも書いたように、このオルガンは48ストップの大オルガンと、その向かい側にある17ストップの小さなオルガンの両方を、一つのコンソールから演奏できるというものですから、非常に多彩な音色を、空間を超えて繰り出せるという優れものの楽器でしたね。マルチチャンネルで聴けば、その効果は絶大なことでしょう。
今回は、「ロシアからの『絵』」というタイトルです。ムソルグスキーの「展覧会の絵」、ラフマニノフの「死の島」、そしてストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」を、オルガン用に編曲したものが収められています。
「展覧会の絵」ほどオリジナルのピアノ曲を離れて編曲された形が広く知られているものはありません。最もポピュラーなラヴェルのオーケストラ版は、ほとんどピアノ版以上の録音頻度を誇っているほどですよね。しかも、オーケストラに編曲したのはラヴェルだけではなく、有名無名を問わず数多くの作曲者や指揮者の手によるオーケストレーションが存在しているといわれています。スラトキンあたりは、1曲ごとに違う編曲者による「展覧会の絵」をライブ録音しているほどですから。クラシックに限らず、プログレ・ロックの雄ELPが演奏した名盤もありました。あるいは冨田勲のシンセサイザー版、などというのも。
ですから、これを聴く前には、オルガンだったらシンセみたいな新鮮なアプローチなのではないか、という、勝手な先入観を持っていました。それは、半分だけはあたっていたようです。とてもクラシックのオルガン音楽とは思えないような派手なパイプの使い方は、まさにシンセの音色に迫ろうというものでした。そしてさらに、そこには冨田が飽くなき追求を見せたような「宇宙」に対するイメージが、全く別な形ではありますが見事に音として反映されていたのです。「ビドロ」などは、まるで「スター・ウォーズ」の「帝国のテーマ」、つまりダース・ベーダーをあらわす音楽のようなイメージを備えてはいないでしょうか。原曲の素朴な荷車の歩みとはうってかわった、兵士の大群が堂々と行進する様が、そこからは聞こえてはこないでしょうか。
もっと「宇宙」が感じられるのは、金持ちのユダヤ人サミュエル・ゴールデンベルクのテーマです。華やかなリード管から流れる音は、まるで「未知との遭遇」での地球外生物との間で使われた交信手段「アープ・シンセサイザー」そのもののようには感じられませんか?「ソラファファド」という音型でしたっけ。ですから、それに続く貧乏なユダヤ人シュムイレのテーマは、まるで母船のまわりを飛び回っている夥しいUFOを描写したもののように聞こえてしまいます。
もちろん、あとの半分は全くの予想外、冨田のような自由奔放なイメージまでを実際にオルガンに置き換えることまでは、さすがにアルブレヒトは行ってはいませんでした。
やはりアルブレヒト自身が編曲を行った「ペトルーシュカ」も、同様にオーケストラを超えた、あくまでオルガンでしかなしえないような挑戦が、心地よいものではありました。そこからは、ストラヴィンスキー自身が込めた音響への挑戦までが、透けて見える思いです。
しかし、この中で最も成功していると感じられるのが、アクセル・ラングマンという別の人が編曲を行った「死の島」だというのが、なにか皮肉な気がします。あくまでモノトーンのストップにこだわったこのオルガン版には、まさに原曲を超えた暗く深い情感が漂っています。それは、ライナーにも紹介されている、この曲を産む元となったアーノルト・ベックリンの「絵」をまざまざと思い起こさせるものでした。
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by jurassic_oyaji | 2008-11-16 20:21 | オルガン | Comments(0)