おやぢの部屋2
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MUSSORGSKY/Pictures at an Exhibition
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Peng Peng(Pf)
Leonard Slatkin/
Nashville Symphony Orchestra and Chorus
NAXOS/8.570716



前回はオルガン版の「展覧会の絵」を取り上げましたが、その中でちょっと触れていたスラトキンによる「ごちゃまぜ」バージョンです。実は、あの時には2004年に録音されたBBC交響楽団との録音(WARNER)が念頭にあったのですが、驚いたことに、同じ指揮者によるこんな新録音(2007年)が出たばかりではありませんか。これもなにかの縁、これを紹介しないわけにはいきません。
これは、スラトキンが、全部で15人の作曲家(その中にはアレンジャーや指揮者もいます)が行った「展覧会の絵」の編曲の中から、それぞれの曲を自ら選んで演奏したものです。そんな珍しいものをこんなにたびたび録音するというのは、よっぽどご自分のアイディアが気に入っているのでしょうか。ただ、今回は最初の「プロムナード」だけ別の人の編曲になっている、という、ほんのわずかな違いはありますが。
こういうものを聴くときには、結局ラヴェルによる編曲との比較になってしまうのは、避けられないことなのでしょう。耳慣れたラヴェルのオーケストレーションとの違いが際だつほど、その曲は刺激的に感じられる、というのは、ごく自然なことです。そういう意味で間違いなく面白いのが、以前彼自身の演奏でご紹介したこともあったナウモフによるピアノ協奏曲バージョンです。 ここでは「古い城」が取り上げられていますが、オリジナルには縁もゆかりもないしゃれたフレーズがピアノで軽やかに演奏されているのが素敵です。
ヘンリー・ウッドが編曲した「サミュエル・ゴールデンベルクと、シュムイレ」も、意外性という点からはなかなかのものです。「プロムスの創設者」という彼のイメージからはほど遠いぶっ飛んだアレンジです(実は、これが出来たのはラヴェルより前)。そして、逆に期待を裏切られないのが、ストコフスキーの「バーバ・ヤーガの小屋」でしょうか。いかにもオーケストラの響きを信じ切った、それだからこそスマートさのかけらもないサウンドは、まさにラヴェルの対極に位置するものです。
そして、エンディングを飾るのは、映画音楽なども手がけている編曲家ダグラス・ガムレイによる「キエフの大門」です。「バーバ・ヤーガ」の盛り上がりを一旦チューブラー・ベルやタム・タムによる神秘的なイントロで断ち切ったあとは、まさに意表をつく楽器による新鮮なサウンドが響き渡ります。極めつけは、そんなタム・タムなどに導かれて登場する男声合唱。しっかりロシア語の歌詞が付いていて、まさにこの曲のアイデンティティを味わう思いです。しかし、オルガン(なんとチンケな音)も加わって進むうちに、後半になるとラヴェルそっくりのアレンジになってしまうのはどうしたことでしょう。もうネタが尽きて面倒くさくなったとか。
しかし、そんな風に聞き慣れたものとの違いを感じつつも、このコンピレーションからは、組曲全体としての方向性はまるで見えてはきません。そのあたりが、スラトキンの限界なのでしょう。
ただ、おそらくアンコールなのでしょうか、最後に収録されているロブ・マテスの編曲による「アメリカ国歌」の秀逸さには、参ってしまいました。まるでウェーベルンの点描技法のように、タイトルを知らないで聴いたら全く何の曲だか分からないような混沌としたものから、次第に「国歌」の姿が明らかになってくるのはとてもエキサイティングです。肝心なのは、こういうものをコンサートで聴かされても怒り出したりはしない「アメリカ国民」の懐の深さ、「にっぽん」で「君が代」をこんな風に扱ったら、編曲者や演奏家は投獄されてしまうことでしょう。東北の刑務所に。
そう、これは実はコンサートのライブ録音、前曲のリストでソロを弾いている弱冠15歳のペン・ペンくんの颯爽としたピアノが、このCDの最大の収穫となりました。
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by jurassic_oyaji | 2008-11-18 23:17 | オーケストラ | Comments(0)