おやぢの部屋2
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ALFEYEV/St Matthew Passion
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Evangelist
Soloists
Choir of the State Tretyakov Gallery
Vladimir Fedosseyev/
Tchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow Radio
RELIEF/CR991094



2007年3月27日に世界初演されたという、おそらく現時点で最も新しい、生まれたばかりの「マタイ受難曲」です(若い受難曲)。作曲者はロシアのヒラリオン・アルフェイエフという方、なんでも、この方は音楽の勉強をしたあとでロシア正教の大僧正(と言うのでしょうか。英語では「bishop」)になったという、ユニークな人なのだそうです。もちろん、彼の作品がCDになったのも、これが初めてなのでしょう。モスクワ音楽院の大ホールで行われたその世界初演のライブ録音が、このCDです。
CD2枚組、演奏にはまるまる2時間を要するという、まさに大作です。ただ、5人のソリストと混声合唱にオーケストラがつくというクレジットになっていますが、そのオーケストラは弦楽器だけ、他の楽器は入ってはいません。「マタイ福音書」に基づいた、全体が4つの部分に分かれている構成をとっています。
なんと言っても、最新の「現代」曲なわけですから、その作風などは全く予想がつきません。なにしろ、少し前のバッハ・イヤーの時に作られたタン・ドゥンゴリホフグバイドゥーリナの「受難曲」などは、かなりとんがった、ちょっと取っつきにくいものでしたからね。しかし、僧職者でもあるアルフェイエフのことですから、そんなヘンなものはおそらく作らないだろう、という気はしますが。
確かに、この曲はいろいろな意味で親しみやすい仕上がりになっていました。テキストはもちろんロシア語が用いられていて、他の受難曲同様「エヴァンゲリスト」が聖書を朗読する、というスタイルは守られています。そう、これは確かに「朗読」、というか、まさに「お説教」のような、礼拝の時のアナウンスメントそのものだったのです。「読んで」いる人は、歌手ではなく実際に礼拝でそういう役目を与えられる人(英語で「Protodeacon」とあります)、彼は「歌詞」を、全くメロディを付けずに「語って」いるのです。ですから、そのエヴァンゲリストのパートは、殆ど礼拝そのもの、ロシアの聴衆にとってこれほど分かりやすいものもないでしょう。
アルフェイエフという人は、洋の東西を問わず幅広い音楽を身につけた人なのだそうです。そこに彼自身のアイデンティティが加わるのでしょうか、彼が創り出す「音楽」には、なんとも幅広い嗜好が現れることになります。冒頭の合唱などは、オーケストラの低音がひたすら単調なリズム(というか、全くのパルス)を繰り返すという、ほとんど「ヒーリング」の世界。その中で、バッハにも比べられようというほどの重厚なハーモニーで、いかにもロシア的な増音程を持ったメロディが響き渡ります。かと思うと、それこそバッハが取り入れたようなプロテスタントのコラールそのものが、オーケストラで奏される、という場面もしばしば、これなどは「引用」と考えた方がよいのかもしれません。
もちろん、ソリストによる「アリア」も、4つの部分にそれぞれ1曲ずつ用意されています。テノールのソリストは、その他に「レシタティーヴォ」という合唱との掛け合いで出番があるのですが、他の3人はこれ1曲だけが出番という贅沢なもの、それぞれに見せ場のある美しい曲ばかりです。
時折出てくる「フーガ」というパーツが、意表をつかれるものでした。この時代に真面目にフーガを作ろうという作曲家がいるだけでも奇跡、しかしそれはバッハのような厳格なものではなく、限りなくメロウな「なんちゃってフーガ」ではありますが。
そんな華麗なフーガに続いて終曲になだれ込むと、また驚きが待っていました。そのメロディは、ヒーリング界の名曲、カッチーニの「アヴェ・マリア」そのものだったのです。ソリストも一緒になって思いの丈を込めて歌い上げる合唱団、いったい、この受難曲はなんだったのでしょう。同じ年の12月には、「クリスマス・オラトリオ」も同じメンバーで初演されたとか。これもCDになるのでしょうか。
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by jurassic_oyaji | 2008-11-22 20:06 | 合唱 | Comments(4)
Commented at 2008-11-25 05:54 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by jurassic_oyaji at 2008-11-25 08:46
ゆきのじょうさん。

有意義なコメント、ありがとうございました。
Commented by FT at 2015-04-30 20:38 x
2015/1/30 14:00〜東京・浜離宮ホールで日本初演があります。
Commented by jurassic_oyaji at 2015-04-30 22:05
FTさん、貴重な情報ありがとうございました。