おやぢの部屋2
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ReComposed by Carl Craig & Moritz von Oswald
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今では殆ど見かけないようになってしまった「イエロー・ジャケット」しかも、よくよく見ると、ロゴが2行(Deutsche/Grammophon)ではなく3行(Deutsche/Grammophon/Gesellschaft)という、もはや現在では使われていない懐かしいマーク、これは、いったい何の復刻版なのか、という疑問と期待がふくらんできます。しかも、この写真はどうやら1/2インチ幅のデジタルマスターテープのようですよ。「Karajan-BP」などと書き殴ってありますから、実際の録音セッションで使われたものなのかもしれません。これだけでも、秘蔵の貴重品を公開されているような気にはなりませんか?
それだけではありません。さらに、中を開けてCD本体を取り出すと、そのレーベル面はなんとチューリップマークのLPのレーベルそのものではありませんか。確か「ORIGINALS」でも同じようなデザインでしたが、あちらは盤面全体の縮小コピー、こちらは現物のLPレーベルより大きなもの、そのままコースターにでも使えそうですね。とことん、マニア心をくすぐられるような体裁ですよ。それにしては、このタイトルが気になります。これが曲の名前、なのでしょうか。
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実は、このジャケット写真は、やはりカラヤンとベルリン・フィルが、1980年台後半という、このコンビの最晩年に行った録音の際のマスターテープだったのです。そして、タイトルにあるカール・クレイグとモリッツ・フォン・オスヴァルトという二人のテクノ・アーティストが、そのテープを使って創り上げた「ダブ」が、この「作品」なのです。メタボにはご用心(それは「デブ」)。 実際に用いられているのは、ラヴェルの「ボレロ」(1985年録音)と「スペイン狂詩曲」(1987年録音)、そしてムソルグスキー/ラヴェルの「展覧会の絵」(1986年録音)です。この16トラックのマスターテープから、必要なトラックを抜き出したのが、ベルリンの伝説的なミニマル・ダブのユニット「ベーシック・チャンネル」のメンバーのオスヴァルト、それはブラック・テクノのメッカ、デトロイトのクレイグの許に送られ、シンセやパーカッションとミックスされることになります。そのようにお互いがベルリンとデトロイトを行き来しつつ、1年近くの時間をかけて作り上げたのが、この64分ほどの「作品」です。
とは言っても、「ダブ」の常として、元の音は原形をとどめないほどに改変されているのは、覚悟しなければなりません。「イントロ」に導かれた4つの「楽章」は、「インタールード」を挟んでさらに2つの「楽章」へと休みなくつながる構成を取っているこの「作品」では、そんなカラヤン・ブランドを期待して聴き始めると軽い失望感を味わうことになるでしょう。「ミニマル・ダブ」というカテゴリー、誤解を恐れずに言えば、「ダブの手法によるミニマル・ミュージック」ということになるのでしょうが、まるでテリー・ライリーのような混沌とした「イントロ」から、順次スティーヴ・ライヒ風のパルスが加わった「楽章」へと移行していくうちに、そのパルスが「ボレロ」のリズムに変わっていくという課程で初めて現れるそのトラックは、「カラヤン」とも、そして「ベルリン・フィル」とも全く無縁な単なる「素材」と化していたのです。そのリズムのループは、見事なまでに無表情なシンセの中に溶けこんでいました。
唯一、その中に人格を感じられるのは、後半「第5楽章」に現れる「スペイン狂詩曲」のフルートのトラックでしょうか。これこそが「ダブ」の醍醐味、普通のオーケストラの中ではまず聞こえることのないフルートパートが、オスヴァルトの手によって見事に浮き上がり、ツェラーの渋い音が眼前に広がるのです。
そのツェラーはともかく、カラヤンがこれを聴いたなら、さぞや怒り狂ったことでしょう。テープの使用を許した今のDGには、もはや芸術家としてのカラヤン・ブランドは必要ないのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2008-12-04 19:58 | ポップス | Comments(0)