おやぢの部屋2
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James Galway(Fl)
Tiempo Libre
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かつて、あまりのギャラの高さに音を上げたRCAから放り出されてしまったゴールウェイですが、移籍先のDGでの活動は、なにかパッとしないものでした。今までの輝かしいキャリアはいったい何だったのか、というほどの、まるで「飼い殺し」に等しい扱いには、このレーベルに対する憤りさえ覚えたものです。もっと自由にさせないと(それは「放し飼い」)。
しかし、いつの間にかまた古巣に舞い戻って、こんな、キューバの若いバンドとの共演という素敵なアルバムを届けてくれました。チャレンジ精神にあふれたとても生きのいいラテン・ジャズのサウンド、やっぱりゴールウェイはこうでなくっちゃ。
実は、1999年にリリースされた「Tango del Fuego」というアルバムでも、やはりゴールウェイはラテン・ジャズに挑戦していました。その中で演奏していたチック・コリアの名曲「スペイン」は、クラシック奏者が片手間に吹いているというありがちなトラックとは一線を画した、真にラテンのグルーヴにあふれたエキサイティングなものでした。オリジナルを演奏していた故ジョー・ファレルをも凌ごうかというそのノリの良さには、感服してしまった記憶があります。全パートがとても難しいパッセージをユニゾンで演奏しているところで、アグレッシブにバンド全体を引っ張っていた姿がとても印象的でした。
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今回は、アルバムのタイトルからはちょっと分かりにくくなっていますが、フランスのジャズピアニスト、クロード・ボランが作った「フルートとジャズピアノトリオのための組曲」という作品をメインに取り上げています。ランパルの委嘱によって、第1番が1975年、第2番が1986年に作られたもので、それぞれランパルとボランのトリオとの共演で初演、レコーディングが行われています。こんな楽しい表紙の楽譜も出版されていますよ。
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しかし、ここでゴールウェイは、普通のピアノトリオではなく、「ティエンポ・リブレ」というキューバの4人編成のバンドと共演しています。彼曰く「名のあるピアノトリオとやったのでは、70年台の味しか出すことは出来ないさ。そこには進歩ってものがないじゃないか」。
このバンドは、ピアノ、ベース、ドラムスの他にパーカッションが加わっています。そこからわき出てくるアフロ・キューバン・リズムこそが、ゴールウェイの求めた「進歩」ということになるのでしょう。さらに、1番(7曲)、2番(8曲)合わせて15曲の中から、「より良い」曲だけを集めて、6曲に再構成、順序も入れ替えて演奏しています。
「スペイン」から10年近く経っても、ゴールウェイの技巧とノリは全く衰えていないことは、冒頭の「Fugace」(1番の4曲目)の、オリジナルより1オクターブ高く演奏されているテーマを聴けば、充分すぎるほど分かります。これだけで、彼の演奏が並みのプレーヤー(ランパルの録音はもう廃盤になって入手出来なかったので、とりあえずこちらのジョヴァンニ・ロゼッリの演奏で)とは遙かに異なる次元のものであることがはっきりするのではないでしょうか。ゴールウェイの目論見通り、途中から入ってくるパーカッションの効果は絶大で、リズム的にも音色的にも、大きな広がりのある音楽に変貌しています。
彼を迎え撃つバンドのリーダー、ピアノのホルヘ・ゴメスも、決して古くさいジャズのスタイルにはこだわらない、イマジネーション豊かなソロを展開してくれています。最後に入っているのが、彼の編曲したバッハの「バディネリー」。フルートが入る前の、まさにラテン・フレイバー満載のイントロ部分は絶品です。
ちょっとした長めのフレーズでの深すぎるビブラートや、わずかに輝きを失った感のある高音などは、来年は70歳を迎えようとするフルーティストであれば、無理もないことなのでしょう。でも、まだまだこんなアルバムが作れるのですから、やっぱり彼は「怪物」です。
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by jurassic_oyaji | 2008-12-08 19:53 | フルート | Comments(0)