おやぢの部屋2
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BACH/Flute Concertos
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Marcello Gatti(Fl)
Enrico Gatti/
Ensemble Aurora
GLOSSA/GCD 951204



先日、チェンバロやフラウト・トラヴェルソなどのオリジナル楽器によるアンサンブルの生演奏を聴く機会がありました。そこで感じたのは、それらの楽器のあまりの音の小ささ。そもそもこういう楽器は、広い場所で沢山のお客さんを前にして演奏するためには作られてはいないのだ、ということを、そこでまざまざと再確認させられたのです。トラヴェルソの息づかいや、チェンバロの繊細な音色などは、まさに王侯貴族のサロンのような、ほんの少しの人しか集まらないところでこそ、正しく伝わるものなのですね。
そういう意味で、こういう楽器をCDで聴くというのは、非常に理にかなったことなのではないでしょうか。このCDなどは、とても響きの良い教会で録音されている上に、トラヴェルソを吹いているガッティ弟のタンギングまで聴き取れるほどの生々しいマイクアレンジ、まるですぐ目の前で自分だけのために演奏してくれているような、それこそ王様になった気分が味わえますよ。
ガッティ兄の率いるアンサンブル・アウローラという、イタリアの旬のグループのバックで、そのガッティ弟が演奏しているのは、バッハの3曲の「フルート協奏曲」です。とは言っても、それぞれにいわく付きのものであるのが、ユニークなところ。まず、「世界初録音」と銘打ったロ短調の協奏曲です。もちろん「初録音」とは言ってもバッハの新作であるわけはなく、「おそらくこんな協奏曲を作っていただろう」と、フランチェスコ・ジメイという音楽学者がでっち上げた作品なのですがね(ですから「真作」でもありません)。バッハの場合、元はソロ楽器のための協奏曲だったものを、カンタータなどの声楽用のアリアに転用するのは日常茶飯事でした。それに倣ってジメイは、まずはフルートのオブリガートがフィーチャーされているカンタータ209番のシンフォニア、つまり序曲を、そのまま第1楽章とし、そこにカンタータ173番の2曲目のアルトのゆっくりしたアリアと、カンタータ207番の3曲目のテノールの快活なアリアを、それぞれフルート・ソロに吹かせて第2、第3楽章としたのです。バッハとは逆の作業を行ったことになりますね。確かにこれは見事なアイディア、この手を使って、これからもどんどん「新しい」協奏曲が「再構築」されればいいですね。
次の「三重協奏曲」は、フルート、ヴァイオリン、チェンバロという3つの独奏楽器のための協奏曲ですが、なんのことはないあの有名な「ブランデンブルク協奏曲第5番」そのものです。ただし、ここで演奏されているのは普段聴かれるものとはちょっと違っていて、もっと以前に作られていただろうという形に「復元」されたものです。その違いは主にチェンバロのカデンツァなのですが、半音進行や時には調性感が曖昧になるような、今のものよりもっとぶっ飛んだフレーズが満載です。
そして、最後はほとんど「フルート協奏曲」として扱われることの多い、「序曲第2番」です。協奏曲特有の3楽章形式ではなく、「組曲」の体裁をとっているのは、ご存じの通りの名曲ですね。名曲ゆえに多くの演奏様式が試みられていて、例えば最初の楽章のフランス風序曲でのテンポ設定や、付点音符の扱い方などは依然として多くの議論を呼んでいたり、有名な「ポロネーズ」での、やはりリズムの処理など、おそらく永遠に結論が出ることはないでしょう。2曲目の「ロンドー」でさえスウィングするという珍しいスタイルのガッティたちの演奏は、その割には奇異に映ることはなく、すんなり納得のいく仕上がりになっています。
そう、何よりも彼らの持つ暖かい音色と演奏スタイルは、とびきりの魅力にあふれたもの、決して聴き手に違和感を生じさせない語り口は、素直に心にしみるものがあります。それこそが、ちょっと神経質なところがあるオランダの「兄弟」アンサンブルとの、最大の違いなのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2008-12-10 21:05 | フルート | Comments(0)