おやぢの部屋2
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ANDERSON/Orchestral Music 4 & 5
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Kim Criswell(Sop)
William Dazeley(Bar)
Leonard Slatkin/
BBC Concert Orchestra
NAXOS/8.559381/2



ルロイ・アンダーソンの生誕100周年を記念してのスラトキンによるオーケストラ曲全集も、いよいよ大詰めを迎えました。なんとも地味な企画だと思っていたのですが、蓋を開けてみればあちこちで好評を博した大ベストセラーとなってしまいました。やはり、安心して聴いていられる心地よさが、今の時代には密かに求められていたのでしょうか。
この全集のおそらく最後を飾るであろう第4集と第5集(試聴はこちらこちら)は、昨年の9月に録音されました。なんと3日間で2枚分の録音を完了するという、このレーベルならではの早業、しかも、ここでは「歌もの」まで加わっているというのですから、まさに驚異的なセッションです。
そう、今回の2枚はヴォーカルが加わってのヴァラエティあふれるラインナップが、特徴となっています。例えば「そりすべり」のヴォーカル・バージョンなどは、クリスマス・シーズンともなればあちこちで耳にすることになるスタンダード・ナンバーですが、それ以外にも多くの曲に歌詞が付けられて歌われているのですね。第4集では、大ヒット曲「ブルー・タンゴ」のヴォーカル・バージョンなどが楽しめます。そんなものはすでにどこかで聴いたことがあるような気になっていましたが、これがオーケストラ伴奏による世界初録音というのですから、ちょっと意外な気がします。それ以外の「忘れられた夢」と「舞踏会の美女」は、確かに「初録音」という気はしますが。
この第4集は、そんなものも含めてカバー集のような仕上がりになっています。「アイルランド組曲」や「スコットランド組曲」といった、文字通りのトラディショナルの「カバー」の他に、彼自身の過去の作品の改作という、言ってみれば「セルフカバー」である「アルマ・マーテル(我が母校)」が、注目に値します。これは、第3集に収録されていたごく初期(1939年)の「ハーバード・スケッチ」という曲を、1954年に大幅に改訂したものです。自身の学生時代の想い出を描いたほほえましい曲ですが、この2曲を比較して聴いてみると、そのスキルの洗練された課程をまざまざと味わうことが出来ます。図書館のシーンなどは、こちらではSE風に人のしゃべり声なども入っていて、楽しめます。そんな比較が出来るのも、数多くの「初録音」が含まれたこの全集の魅力でしょう。
第5集では、彼の唯一のミュージカル「ゴールディーロックス」が紹介されています。数々のヒット曲をものにしたアンダーソンが、1958年にブロードウェイに進出した時のこの作品、しかし現在ではそれは完全に忘れ去られたものとなっています。おそらく初演時に録音されたオリジナル・キャスト盤に続くことになる、この珍しい曲の録音を聴いてみると、なぜこの作品がヒットしなかったのかが分かるような気がします。アンダーソンの持ち味である気の利いた音楽は、それなりの楽しみは与えてくれるものの、その屈託のない音楽の中にはドラマ性といったものが完璧に欠如しているのです。それは、同じ時期にレナード・バーンスタインとスティーヴン・ソンドハイムという二人の天才によって作られた「ウェスト・サイド・ストーリー」と比較すれば、痛いほど分かることなのではないでしょうか。メインのショーストップである「Shall I Take My Heart and Go」などは、1953年に作られたコール・ポーターの名曲「I Love Paris」に酷似していますし。
そんなリスキーな冒険に手を出さなくとも、アンダーソンの音楽は十分に私たちの心を慰めてくれる力を持っています。この2枚のそれぞれに収録されているクリスマスメドレーを聴くだけで、それは良く分かるはずです。第4集の「クリスマス・フェスティバル」の最後で、壮大なオルガンをバックにして「諸人こぞりて」と「ジングル・ベル」が同時に演奏されるというハチャメチャさこそが、彼の真骨頂なのですから。
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by jurassic_oyaji | 2008-12-12 20:19 | オーケストラ | Comments(0)