おやぢの部屋2
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WIDOR/Symphony No.5 for Organ
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Pierre-Yves Asselin(Org)
DENON/COCO-70993



「クレスト1000」をもう一つ。昔聴き逃していたものを、こうやってまた味わえるのも良いものです。LP時代には、やはり「1000円盤」というのがありましたが、安い分、なんかいい加減なプレスで、買ってから後悔したことがよくありましたね。その点CDになってからは、なんせデジタルですので、いくら安くても音質にはなんの影響もありませんから、安心出来ます・・・と思うでしょう?ところが、実はそうではないのです。それは、ここでも何度となく書いたことなのですが、デジタルで録音したものがそのままCDになることなどは、決してあり得ないのですよ。早い話が、マスタリングの時にケーブルを変えただけで、その音はまるで変わってしまうのですからね。
そんなことなどまだ分からなかった頃、このレーベルのデジタル録音のLPで非常によい音だった福島和夫のフルート作品集(エイトケンの演奏)がCD(COCO-6277)になったので、大いに期待して聴いてみたところ、あまりにもひどい音だったのでがっかりしたことがありました。それは、録音レベルが異様に低く、全体にバックグラウンドノイズが乗っていて、LPが持っていた輝きが全く消えていたのです。今にして思えば、それはいい加減なマスタリングのせいだったのですね。
今回のアイテムに関しては、20年以上前の「これがDENON CDだ」(18CO-1055)というコンピレーションに、1トラックが入っていたものがあったので比較してみましたが、そんな音の良さのデモンストレーションのためのCDよりはるかに良い音だったので安心です。最近は、マスタリングのノウハウも確実にレベルアップしているのでしょう。
このヴィドールのオルガン交響曲、クレジットはありませんが、このCDが録音された1985年当時だと、エンジニアはオルガンの録音にかけては定評のあったピーター・ヴィルモースでしょうか。ここで使われているフランス風のカヴァイエ・コル・オルガンのフワフワした肌触りが、見事にとらえられた素晴らしい録音に仕上がっています。まるでノエルのような可愛らしいテーマがさまざまに変奏される第1楽章では、それぞれの変奏ごとのレジストレーションの変化を存分に楽しむことが出来ますし、何よりも第4楽章に入ったときの、まるで世界が変わったような軽やかな響きには、ショックすら与えられます。
ところが、第5楽章の有名な「トッカータ」になったとき、そんな美しい音に酔いしれているだけでは解決されない問題に直面することになります。このアスランというオルガニストは、音色に対する感覚は非常に鋭いものの、演奏上のテクニックにかなりの問題があることが、このがっちりと作られた曲では露呈されてしまうのです。ピアノではあんなにうまいのに(それは「アムラン」)。何よりも、この曲では一貫したテンポが維持されなければならないのに、手鍵盤のパターンの最後で常に急ぐという変なクセで、とても落ち着きのないものになってしまっています。
ジャケットの写真で分かるように、ここでは「展覧会の絵」から、最後の2曲がカップリングされています。ここでは、そんなオルガニストの欠点が、さらに増幅されます。テンポはさらにいい加減になっていて、全く収拾がつきません。おそらくピアノ版をそのまま演奏しているのでしょうが、最後の「キエフの大門」などは、オルガンで演奏するときには全く必要のない、低音を補強するための前打音をそのまま演奏していますから、ラヴェル版を聴き慣れた耳にはとても異様。さらに、後半のちょっと難しい和音になると、嫌気がさしたような明らかなミスタッチがあちこちで見受けられます。
スタッフのクレジットがなかったのは、そんないい加減な演奏の責任を、誰も取りたがらなかったからなのでしょうか。
by jurassic_oyaji | 2008-12-26 22:26 | オルガン | Comments(0)