おやぢの部屋2
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SHOSTAKOVICH/Symphony No.5
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Vladimir Ashkenazy/
Philharmonia Orchestra
SIGNUM/SIGCD135



合唱曲が専門だと思っていたこのレーベルから、フィルハーモニア管弦楽団の録音がまとめてリリースされました。新しい録音もあるようですが、これは2001年のもの、マルCでは2008年とあったので、ちょっとだまされた気分。それよりも、「東京のサントリーホールで録音」とあるのが、ちょっと気になります。果たせるかな、スタッフのクレジットを見てみると、「Tomoyoshi Ezaki」の名前が。そう、これは日本のEXTONの音源、2001年の12月に国内発売されていたCD(+SACD)と全く同じものでした。カップリングの「祝典序曲」も一緒です。
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OVCL-00058(CD), OVGL-00009(SACD)

ただ、EXTONの方には「サントリーホールにてセッション録音」とあるものが、こちらでは「Recorded live at Suntory Hall」と記載されています。これは、おそらく「ライブ録音」という概念の捉え方の違いなのでしょう。実際はコンサート当日のゲネプロを録音しているのですから、「セッション」には違いないのですが、今では普通「ライブ」と言った時には、本番の録音にそういう素材も加えて編集したものを指しますからね。ちなみに、発売時の「レコ芸」での批評では、宇野先生によって「精神美不足」という意味不明の「宇野語」で一蹴されていましたね。誠心誠意演奏したというのに、あんまりです。
この同じコンビは、実はつい最近来日していました。その模様をテレビで見たら、首席フルート奏者が大好きなケネス・スミスではなく別の人だったので、ちょっとがっかりしたものです。このオーケストラは、ずっと管楽器の首席奏者が一人という体制でしたから、フルートのトップは必ずスミスが吹いている、という安心感があったのですが、さすがにこれだけ忙しいオケで毎回トップを吹くのは辛いものがあるのでしょう(実際、そんな苦境を訴えたドキュメンタリー番組がありました)、今では他のオケのように複数の首席奏者を雇うようになっています。テレビでやったのは、スミスが降り番のコンサートだったのですね。しかし、このCDが録音された2001年にはもちろんフルート・ソロは彼のもの、数々の美しいソロを持つこの曲では、彼のフルートが満喫できることでしょう。
まずは、「祝祭序曲」の、まさにノーテンキなたたずまいに、圧倒されてしまいます。ただ、このあまりの明るさは、続く交響曲のための「伏線」だったのだ、と思いたいものです。確かに、その交響曲では、見せかけだけの華やかさは全く影を潜め、穏やかで思慮深い音楽が広がっていました。
例えば、第1楽章のヴァイオリンに現れるテーマなどは、ことさら悲痛な面持ちを見せることは決してなく、ひたすら無力さを装うことに終始しています。それは、あたかも、人知れずなにかに耐えているようなはかなさを思い起こさせるものです。その後、ひとしきりの高揚感のあとにフルートに現れる同じテーマを、スミスはまるですべてを救済するもののように暖かく慈悲深い音色で吹いてくれています。このような優しい眼差しのことを「精神美」と感じられない評論家は不幸です。
第2楽章で見せる生真面目なリズムには、アシュケナージの飾らない人間性がそのまま反映されているのではないでしょうか。ひねくれたアイロニーの固まりであるこの曲に、あくまで真摯に取り組もうとしている彼の姿勢は、好感が持てます。ここでも、指揮者の思いをはき違えたような、いかにもなコンサートマスターのソロを、優しく受け止めて包み込むのが、それに続くフルートのスミスの役目です。
第3楽章も、最初のフルートの長いソロによって性格がきっちりと印象づけられます。同じテーマが、今度は逆にヴァイオリンによって奏される頃には、もはやすべてが語り尽くされていることを感じるはずです。ここまで出来上がってしまえば、フィナーレは別に小細工を弄さなくても、音楽そのものがすべてを語ってくれることでしょう。
サントリーホールの空っぽの客席に広がったDのユニゾンの残響、それが少し冷たく感じられたのは、そこにはそれを受け止める聴衆がいなかったせいなのかもしれません。

CD Artwork © Signum Records (UK) Octavia Records Inc., Japan
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by jurassic_oyaji | 2008-12-30 19:18 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by ぐすたふ at 2008-12-31 14:08 x
いつも楽しく拝読しています。
今来日時のフィルハーモニアのフルートは、かつてロンドン響の首席の人でしたね。
蛇足で失礼しました。
Commented by jurassic_oyaji at 2008-12-31 15:27
ぐすたふさん、貴重な情報ありがとうございました。

実は、まだきちんと録画を見直していないものですから。