おやぢの部屋2
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STRAUSS/Der Rosenkavalier
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Anne Schwanewilms(Marschallin)
Kurt Rydl(Baron Ochs)
Anke Vondung(Octavian)
森麻季(Sophie)
Uwe-Eric Laufenberg(Dir) 
Fabio Luisi/
Sächsische Staatskapelle Dresden
MEDICI ARTS/20 56918(DVD), 20 56914(BD)



200711月に行われたザクセン州立歌劇場の日本公演の模様を収録したNHKの映像が、DVDと、そしてブルーレイ・ディスクによってリリースになりました。この歌劇場は一般にはゼンパー・オーパー、あるいはドレスデン国立歌劇場と呼ばれているところで、2006年の大洪水で、衣装が使い物にならなくなりました(ドレス、出ん)?もちろん、これは以前にそのNHKのハイビジョンによって放送されたものと全く同じ内容です。あ、とは言っても、放送の時のあのげんなりするような悪趣味な解説は入ってはいませんから、ご安心を。
ラウフェンベルクの演出は、例えば非常に有名なクライバーの映像などで見ることが出来るオットー・シェンクあたりに代表されるような、貴族社会の豪華絢爛さをそなえたものではありません。時代設定もかなり現代に近いところに置き換えてありますから、なによりもそんなハイソな、ちょっと堅苦しい作法に支配された人間ではない、もっと生身のリアリティが伝わってくるものに変わっています。
その中で、最も輝きを見せているのが、シュヴァンネヴィルムスの元帥夫人ということになるのでしょうか。なんでも、当初予定されていたアンゲラ・デノケが病気で来日出来なくなったための急遽の代役だったそうですが、彼女は見事にその大役を果たすだけではなく、ひょっとしたらデノケよりももっと魅力的なマリー・テレーズを見せてくれていたのではないでしょうか。この人のルックスから連想したのが、「デスパレートな妻たち」というアメリカのテレビドラマに出てくるブリーというキャラ、あんな現代的な、それでいてちょっとタカビーなところを見せる、シャープなマスクに、惹かれました。声も、本当は若いはずのこの役にふさわしい、守りに入っていない力強さを持つものでした。ですから、大詰めに見せる諦念のようなものも、ありがちな深刻さではなく、もう少し前向きの意志まで感じられるものとなっているのではないでしょうか。
さらに、それこそシェンクのような演出では間違いなく嫌われキャラとなって浮き上がってしまうはずのオックスが、ここではいくら粗野な振る舞いをしようが笑って許されるという、おいしい役どころに変わっています。そこでのリドルが、まるで水を得た魚のような生き生きと振る舞っているものですから、とても楽しめます。やんちゃなオックスが次は何をやってくれるのか、そんな思いで眺めていられるのですね。
オクタヴィアンのフォンドゥンクも、とても素晴らしいものでした。第1幕の前奏曲の間に、愛人同士がまず衣服を脱いでベッドに入るところから演じる、というのがこの演出のリアリティを象徴するような場面なのですが、そこでの彼女はまさに「男」になりきっています。
そんな、全てがこの演出の中で必然と感じられる中にあって、ゾフィーに森麻季のようなシロートがキャスティングされていたのは、いったいなぜなのでしょう。例えば、群衆の中の1人ですら、それぞれがしっかり意味のある演技をしているというのに、彼女だけは全くその場にそぐわない、まるで学芸会のような稚拙な振る舞いを見せていたことが、何度あったことでしょう。歌っていない時の、まるでやり場がないような投げやりな態度は最悪です。その歌も、響きがしばらくしてから乗ってくるというおかしなエンヴェロープを持つものですから、最後の聴かせどころ、フォンドゥンクとのデュエットでは、聴くも無惨な醜態をさらしています。決して安くはない入場料を払って聴きに行ったお客さんであれば、こんなキャスティングに憤りを感じないはずはありません。なんでも、カーテンコールでは彼女に対するブーイングも出ていたそうですね(映像でも、それらしいものが確認出来ます)。もっともです。
オーケストラは、さすが、隙のないところを見せてくれています。しかし、ルイージの指揮には、たびたび引き合いに出しているクライバーのようなしなやかさはありません。

DVD Artwork © Medici Arts
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by jurassic_oyaji | 2009-01-07 20:37 | オペラ | Comments(3)
Commented by ぐすたふ at 2009-01-09 13:07 x
>放送の時のあのげんなりするような悪趣味な解説

全くです。溜飲が下がりました。
私のような軟弱者には、あの悪趣味攻撃はきついです。
いいよ、わかったよ見なきゃいいってことだろ、はいはい、といった心境です。

オペラ、詳しくないですが唄ってないときの《演技》《表情》大事ですよね。
これがなってないと舞台上演としては致命的です。
94年のクライバー来日公演はやはり《格別》の感を今更ながら感じます。
Commented by ぐすたふ at 2009-01-09 13:21 x
すみませんm(._.)m追伸です。
悪趣味解説を捩じ込まれて投げやり演技でしらけさせられるぐらいなら、あの時の天国的気分の記憶にしばし遊んでいるほうが数段ましです。
きっと建設的態度ではないのでしょうが。
ボニーは背中でも語ってました。
それに、私を連れていってね、といった不安そうな切ない表情は今でも鮮やかに蘇ります。
失礼しました。
Commented by jurassic_oyaji at 2009-01-09 20:45
ぐすたふさん。

私も、お正月に放送されたクライバーの録画を、口直しに見直しているところです。