おやぢの部屋2
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SIXTEN/En svensk Markuspassion
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Jeanette Köhn(Sop)
Jesper Taube(Bas)
Ragnar Bohlin/
Maria Magdalena Motettkör
CAPRICE/CAP 21803



1962年生まれのスウェーデンの作曲家、フレドリク・シクステンが作った「スウェーデン語によるマルコ受難曲」の、世界初録音です。その名の通り、曲のテキストは新約聖書のマルコ福音書のスウェーデン語訳、さらに、その間で歌われるコラールも、ベンクト・ポホヤネンという、1944年生まれの詩人によって作られたスウェーデン語のものとなっています。島根県の名産ですね(それは「シジミ」)。そんな「スウェーデン語」一色の曲だから、というわけではないのでしょうが、このスウェーデンのレーベルのCDでは、ライナーノーツも全てスウェーデン語という徹底した姿勢が示されているのです。したがって、作曲家自身による解説もスウェーデン語、英語ならなんとか読み書き出来ても、そんな北欧の言語など全く縁がないという我々日本人にとっては、ちょっと辛い仕様です。せめてテキストぐらい、英語の対訳がついていれば、と思うのですが、これもスウェーデン語だけ、まあ、普段受難曲を聴きなれている人でしたら大まかな流れは分かるでしょうし、時折「ペトロ」とか「ピラト」といった単語が断片的に聞こえてきますから、それほどの支障はないのかもしれませんが、オリジナルのコラールには、もはやお手上げです。
曲の構成は最初と最後に、少し長めの合唱(これには児童合唱も加わります)がセットされていて、いわば全体の「額縁」といった趣となっています。型どおりの福音書の朗読が、レシタティーヴォやアリオーソあるいは合唱によって音楽的に進む中、要所要所に全部で11曲のコラールが挿入されます。ただバッハの曲などに見られるような、ソリストによるアリアなどは全くありません。ですから、外見上はまるでシュッツあたりの作品のような、極めてストイックなものとなっています。演奏時間はほぼ1時間、凝縮されたそんな構成による、あまり長すぎないものです。
演奏者は、ちょっと意外なソプラノによるエヴァンゲリスト、そしてイエス役のバス歌手の二人が物語を進行させます。そこに合唱も加わり、室内楽の伴奏が入ります。その楽器編成がちょっと変わったもので、弦楽四重奏にコントラバスが2本加わった弦パートに、1本のオーボエ、2本のファゴット、そしてオルガンが入るという、低音楽器が異常に多い不思議な編成です。
冒頭の合唱が、そんな楽器編成の暗い音色をめいっぱい披露してくれるものであったのは、ある意味予想出来たことでした。しかも、その曲はまさにバッハ風の「パッサカリア」、執拗に繰り返される低音に乗って、テーマが延々と変奏されるというものですから、「暗さ」はさらに募ります。しかし、よく聴いてみると、そのテーマにしても変奏にしても、どこか北欧的な素朴な旋法に支配されていることに気づきます。
その合唱が終わり、レシタティーヴォが始まると、そんな思いはさらに強まります。それは、「レシタティーヴォ」と言われて思い浮かべるようなある種無機的なものではなく、まるで北欧の民謡のようなテイストを持っていたのですからね。曲の大半を占めるエヴァンゲリストのレシタティーヴォを、なぜソプラノ歌手に託したのか、その意味が良く理解出来るような、それは優しさに満ちた、耳に心地よいものでした。それを歌っているケーンという人が、とても柔らかな声と滑らかな歌い方の持ち主であったことも、そんな印象を強く与えられた要因なのでしょう。
そうなってくれば、合唱によるコラールがどんなものかは、自ずと想像がつくことでしょう。それは、まさにスウェーデンの民謡を編曲した合唱曲のように聞こえてくる親しみやすいものでした。そう、これはまさに、非常に分かりやすいスウェーデン人によるスウェーデン人のための「受難曲」だったのです。それなら、英語のライナーなどは必要ありませんね。

CD Artwork © Caprice Records (Sweden)
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by jurassic_oyaji | 2009-01-11 21:00 | 合唱 | Comments(0)