おやぢの部屋2
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BLAKE/Music for Piano and Strings
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Madeleine Mitchell(Vn)
Howard Blake(Pf)
Jack Rothstein(Vn)
Kenneth Essex(Va)
Peter Willison(Vc)
NAXOS/8.572083



1938年生まれのイギリスの作曲家ハワード・ブレイクの名前は、あの名作アニメ映画「スノーマン」のサントラを作ったことで、広く知られているはずです。中でも、ボーイ・ソプラノによって歌われる「Walking in the Air」というナンバーは、単なる主題歌の範疇を超えて、多くのアーティストによってカバーされ、一つの「ヒット曲」としてブレイクしたのです。ケルティック・ウーマンのように、完全に独自の世界を持った作品にも変貌していますし、フルーティストのケネス・スミスのインスト・バージョンは、リサイタル用のコンサート・ピースとして使われても、なんの遜色もないものです。
ブレイクは、多くの映画音楽の作曲家のように、しっかりとしたクラシックの教育を受けた音楽家です。自身もピアニスト、あるいは指揮者としてコンサートに登場する機会もありました。故ダイアナ妃の30歳の誕生日のために委嘱されたピアノ協奏曲では、フィルハーモニア管弦楽団をバックに自らピアノ・ソロを演奏したそうです。
そのような、「二足のわらじ」を履く作曲家にありがちなのは、映画音楽と「純音楽」との間で、極端なほどスタンスを変える、というスタイルです。日本人だと池辺晋一郎あたりが分かりやすいでしょうが、映画やドラマであれ程平明な分かりやすい音楽を書いている人が、「交響曲」になったとたん、なんとも深刻で、眉間にしわを寄せなければ聴いていられないようなものを作るのですから、その落差には驚かされます。そこからは、いかに本人が否定しようが「クラシックこそが、自分の本当の姿」みたいな鼻持ちならない姿勢がまざまざと見えてくるのです。
しかし、このCDを聴くと、ブレイクの中にはそんな「垣根」などは全く存在していないことに、気づかされます。ヴァイオリン・ソナタやピアノ四重奏といった、もろ「クラシック」というステージで彼が作り上げた音楽からは、まさに「スノーマン」そのもののテイストが感じられるのですから。
それが端的に感じられるのが、ヴァイオリン・ソナタでしょう。第1楽章のテーマは、低音が半音ずつ下がっていくという「クリシェ」の手法や、シンコペーションがポップな味を出しています。第2楽章では、マイナー・キーで「泣き」を誘い、第3楽章ではまさに「スノーマン」の中での「スノーマンのダンス」と同じ種類の音楽が鳴り響きます。
同様に、1974年に作曲した当時に録音したメンバーが、今回のセッションに全員集合したというピアノ四重奏曲は、とても「現代」に生きる作曲家とは思えないほどの、誰しもが共鳴出来る素敵なメロディと、浮き立つようなリズムを持った素晴らしい作品です。アレグロ、スケルツォ、レント、アレグロという古典的な4楽章構成となっていますが、それはまさに「名曲」と同義語の「古典」の響きに支配されたものでした。ピアノがメロディを歌う時のトリルなどは、まるでシューベルトの「鱒」のように聞こえてはこないでしょうか。スケルツォの間に挟まるトリオの流麗なこと。レントには、とても穏やかな「癒し」に近いものも現れますし、終楽章にはメンバーそれぞれを立てようという対位法までが登場するというほほえましさです。
ただ、いかにもポップス寄りのように思えてしまう「ジャズ・ダンス」というヴァイオリンとピアノのための組曲は、逆に変なこだわりのため、タイトルとは裏腹に頭でっかちの作品のように思えてしまいます。特に前半に多用される変拍子が、とても居心地の悪いものでした。ブレイクだったら、もっと親しみやすい曲が作れるはずのこういうスタイルの方が窮屈なものになっているというのが、ちょっと面白いところです。そんなあたりを、こちらで確かめてみては。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2009-01-19 20:38 | 現代音楽 | Comments(0)