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Taverner & Tudor Music II
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Paul Hillier/
Ars Nova Copenhagen
ARS NOVA/8.226056



かつて「ヒリヤード・アンサンブル」のメンバーだったことなどは、もはやおぼえている人もいなくなったポール・ヒリアー、現在ではもっぱら合唱指揮者として、その名声を誇っています。彼が指揮をした合唱団からは、極めて高いレベルの音楽を引き出していることが、多くのCDによって知られているのですからね。その大半は、エストニア・フィルハーモニック室内合唱団とのものなのでしょうが、最近になってこんな合唱団の首席指揮者を務めていることを知りました。それは、デンマークにある「アルス・ノヴァ・コペンハーゲン」という、20人にも満たないメンバーの合唱団です。ホットドッグの材料ですね(それは「コッペパン」)。ヒリアーとのコンビが始まったのは2003年からのことですが、彼らは自身のレーベル「ARS NOVA」から今までに2枚のアルバムを出していました。それは、ジョン・タヴァナーのミサ曲を中心にしたイギリス、チューダー王朝の作品を集めたものと、なんとテリー・ライリーの初期の傑作、というより、ミニマル・ミュージックを代表する名曲であるin Cを、合唱で演奏するというショッキングなものでした。つまり、彼らはルネッサンス期のポリフォニーのような「アーリー・ミュージック」と、「ニュー・ミュージック」、つまり現代の音楽とに全く等しい価値観をもって取り組んでいるという、ユニークなスタンスをとっている団体なのです。この「in C」のヴォーカル・バージョンなどは、最近の合唱の録音の中ではひときわ素晴らしい視点を持った快挙なのではないでしょうか。
今回は、「タヴァナーとチューダー王朝」の第2集です。前回は有名な定旋律ミサ「春風のミサ」がメインでしたが、ここでは同じくタヴァナーの代表作「ミサ・グロリア・ティビ・トリニタス」が取り上げられています。そこに、定旋律の元ネタであるプレイン・チャントや、タヴァナーの前後に活躍したイギリスの作曲家たちの曲が散りばめられている、という構成です。
このようなレパートリーは、かつてはイギリスの団体の独壇場でした。そのさきがけは「プロ・カンツィオーネ・アンティクヮ」や、それこそ「ヒリヤード・アンサンブル」のような、すべて男声、あるいは教会の聖歌隊(「キングズ・カレッジ合唱団」など)のように、少年がトレブル・パートを歌っているものでした。そのような流れに変化を与えたのが、女声、といっても、まるで少年のようなノン・ビブラートの声を自在に駆使できるシンガーが加わった「タリス・スコラーズ」です。彼らは、この時代の合唱曲が現代人にも共感を持って受け入れられるようなスタイルを確立し、そこからほぼ完璧な演奏を紡ぎ出していたのです。
この「アルス・ノヴァ・コペンハーゲン」は、そんなイギリス合唱界の一つの成果である「タリス」のスタイルを、継承したもののように思えます。しかし、「タリス」が1984年に録音した同じ曲のCD(GIMELL)と比較してみると、この「アルス・ノヴァ」の演奏には、精密なハーモニーと表現力はそのままに、そこに北欧ならではの豊かなソノリテが加わっていることが分かります。中でもソプラノ・パートの、完全にノン・ビブラートでありながら、その中に力強さとさらには「色気」のようなものを含んだ音色には、とてつもない力を感じることが出来るはずです。このアルバムのライナーノーツを、「タリス」のメンバーだったサリー・ダンクリーが執筆していることからも、彼らの志はうかがえます。
タヴァナーの織りなすポリフォニーの綾は、この卓越したメンバーによって極上の輝きを放っています。そんな中に突然、少し時代が進んだウィリアム・バードの「Christe qui lux es et dies」というホモフォニックなスタイルの音楽が現れると、とても新鮮な驚きが待っています。まさにプログラミングの妙、素晴らしい録音と相まって、このアルバムの魅力をさらに高めています。

CD Artwork © Naxos Global Logistics GmbH (Germany)
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by jurassic_oyaji | 2009-01-27 23:38 | 合唱 | Comments(0)