おやぢの部屋2
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SCHUBERT/Winterreise
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Christoph Prégardien(Ten)
Joseph Petric(Accordion)
Pentaèdre
ATMA/ACD2 2546



今までにシュタイアーとのフォルテピアノ伴奏版、カンブルランとのオーケストラ編曲(もちろん、ハンス・ツェンダーによるもの)版と、ひと味違った「冬の旅」の録音を行ってきたプレガルディエンが、今回もなかなかユニークなアルバムを出しました。伴奏はなんと木管五重奏+アコーディオンという不思議な編成、さらに、曲順がシューベルトの楽譜による順番ではなく、ヴィルヘルム・ミューラーが出版した時の順番に変えられています。
この歌曲集の曲順に別の可能性があったことなど初めて知りましたが、そうなった経緯はこういうことなのだそうです。最初にシューベルトがこの詩集に出会ったのは、ミューラーが雑誌に発表した12編の形ででした。彼はまず12曲から成る曲集として、「冬の旅」を出版します。これが、現在では「第1部」と呼ばれている1曲目から12曲目までの曲です。しかし、後にミューラーはさらに12編の詩を作り上げ、それを続編という形ではなく、以前の12編と一緒にして大幅に順序を入れ替え、24編の詩集として出版したのです。それを見たシューベルトは、すでに出来上がっていた最初の12曲の流れを大切にするために、あえて曲順は変えず、残りの12曲を「第2部」という形で曲集にしたのです。その際に、22曲目の「勇気」と23曲目の「3つの太陽」は、ミューラーの順番とは逆にしたのは、シューベルトなりのこだわりでしょうか。
すっかり「シューベルト版」の曲順に馴染んでしまっているところへ、この「ミューラー版」を聴かされると、確かにちょっとした違和感が無いわけではありません。なにしろ、5曲目の「菩提樹」のあとに、本来ならずっと後、13曲目の「郵便馬車」が聞こえてくるのですからね。さらにショッキングなのは、11曲目、つまりほぼ折り返し点に位置していた印象的な「春の夢」が、最後近くの21曲目にあることでしょう。この2点だけでも、曲集全体に対するイメージが、ガラリと変わって感じられるはずですよ。
そして、今回の伴奏の楽器編成です。編曲を行ったのは、ここで演奏している木管五重奏団「ペンタドル」のオーボエ奏者、ノルマン・フォルゲですが、彼が管楽器だけではなく、そこにアコーディオンを加えたアイディアは、ちょっと微妙な評価を呼ぶことでしょう。もっとも、ツェンダーのぶっ飛んだアレンジを体験していれば、これなどはいともまともなものに思えてくるのかもしれませんが。実際、オリジナルのピアノ伴奏を逸脱することは決してない、それどころか、ピアノではなかなか聞こえてきにくい旋律線が、管楽器によってきれいに歌われているあたりはなかなかのものです。クラリネットは時にはバス・クラリネットに持ち替えて、超低音の不気味さを演出してくれていますし、「郵便馬車」では、ナチュラル・ホルンが素朴な音程でこの伴奏音型の本来の姿を浮き彫りにしています。そして、シューベルトでは21曲目、ここでは17曲目の「宿屋」では、管楽器の4人の男性メンバー(フルートは女性)が、なんと「男声四重唱」を披露してくれているのですから、すごいものです。楽器を演奏する人が合唱をやるというのはなかなかありそうで無いもの、ここで聴かれる素晴らしいハーモニーは、まさに「プロ」の腕前です。
そう、もう一つ、このアルバムのこだわりがありました。それは、オリジナルのキーで歌われている、ということです。本来はテノールで歌うためのキーだったものが、なぜか低音歌手用に移調した楽譜が流布される中で、この曲は例えばバスのハンス・ホッターやバリトンのディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウの渋~い演奏が最高のものとされてしまっています。テノールのキーが逆にゲテモノ扱いすらされて、奇異な目で見られていたのですからね。しかし、ここでのプレガルディエンの演奏を聴けば、もうそんなことを言う人はいなくなることでしょう。この曲の「暗さ」は、ことさら低い声にこだわらなくとも、充分に伝わるものなのですから。

CD Artwork © Atma Classique (Canada)
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by jurassic_oyaji | 2009-02-02 19:39 | 歌曲 | Comments(1)
Commented by HIDAMARI at 2009-03-11 09:22 x
こんにちは、トラックバックいただきました。これからもよろしくお願いいたします。