おやぢの部屋2
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PURCELL/Dido & Aeneas
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Sarah Connolly(Dido)
Gerald Finley(Aeneas)
Elizabeth Kenny, Steven Devine/
Choir of the Enlightenment
Orchestra of the Age of Enlightenment
CHANDOS/CHAN 0757



今年はメンデルスゾーンの生誕200年祭ですが、同時にイギリスの作曲家ヘンリー・パーセルの生誕350年という記念の年でもあります。彼の代表作である「ディドとエネアス」というオペラも、さまざまな露出があるのでしょうか。
もちろん、このタイトルは主人公の名前から取られているというごく普通のネーミングです。つまり、ディドというカルタゴの女王と、エネアスという、ガソリンスタンドのような名前の(それは「エネオス」)トロイの王子との愛の物語です。オペラとは言ってもほんの1時間足らずで聞き終えてしまえるという手軽なもの、というか、もともとは女学生が演じるスクール・オペラだったのですね。
最初にこのオペラをCDで聴いたときには、正直そのプロットには付いていけないものがありました。なんとも、話の進み方があらゆる面で唐突なのですよ。なかでも、愛し合っていたはずの美男美女が、別れなければならない動機がさっぱり分からないのには困ってしまいました。もちろん、それはディドを憎む魔法使いのたくらみによる神のお告げという、エネオスにとっては絶対的なものには違いないのですが、そんな子供だましのようなやり方が良く通用したものです。しかも、エネオスは、やっぱりディドの愛の方が神のお告げよりも大事なことに気づいて、ヨリを戻しにやってくるのですが、なぜかディドはそれをはねつけてしまうのですね。さらに、その事を嘆いて自ら命を絶ってしまうというのですから、もはや理解不能な世界です。
しかし、そんな理不尽なお話などは、オペラの世界では日常茶飯事であったことにも、気づくべきでしょう。なんと言っても有名なのは「魔笛」、途中で、今までの善人と悪人の設定が全く逆になってしまうのですから、たまったものではありません。そういうときに必ず出てくるのが、「しかし、モーツァルトの音楽の美しさは、そんな物語の矛盾などを超えたもの」という常套句です。さらに、最近大流行の「読みかえ」演出によって、大概のお話は説明可能なものに変貌させることが可能になっています。ですから、荒唐無稽なお話を、いかに深遠な思想を含んだものに変えるかが、昨今の演出家に課せられた使命だとは言えないでしょうか。ワーグナーの「指環」あたりは、まさにそれにはうってつけの素材と言えるでしょう(もっとも、逆に一層分かりにくくなる場合もありますがね)。
ですから、この「ディド」も、演出家にとっては恰好の題材、まだ見たことはありませんが、ぜひそのうちに映像で見てみたいものです。
そんな、いささか強引な筋の運びなど気にさえしなければ、最後の「ディドの死」という深い憂いをたたえた美しい音楽を味わうために、1時間ちょっとの暇を惜しむことはありません。ここでそれを歌っているサラ・コノリーの、まさに心の琴線に触れる深い歌を、心ゆくまで味わおうではありませんか。
もう一つの楽しみは、魔法使いの歌うおどろおどろしい呪いの歌です。これを最初に聴いたのが、クリスティの指揮によるものだったのですが、その時のキャストはクレマン・ジャヌカン・アンサンブル、となると、この役はドミニク・ヴィスということになりますね。そんな強いインパクトの演奏と比べてしまうと、パトリシア・バードンはいかにもまっとうに聞こえてしまいます。
そんな、クリスティ盤にはなかったような、踊りの音楽が時たま聞こえてくることがあります。これは、最近の研究の成果だとか。「指揮」とクレジットされていて、オーケストラの方向付けをしている、リュートのエリザベス・ケニーと、チェンバロのスティーヴン・デヴァインが中心になった演奏は聞きものです。やはり、オペラにとって重要なのは、物語のプロットではなく、そんなエンタテインメント性なのでしょうか。

CD Artwork © Chandos Records Ltd
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by jurassic_oyaji | 2009-02-12 23:10 | オペラ | Comments(2)
Commented by sarahoctavian at 2009-02-13 06:01 x
こんばんわ、はじめまして。コノリー様ファンクラブの者です。ディドの物語性についての記事興味深く拝見しました。このCDでは恋のとりこになってしまった誇り高い女性の心揺れ動く姿が痛いほどに伝わってきたと思います。魔法の力に翻弄される運命とか、クライマックスで愛をはねつける場面とか・・。全てはラストのあの一曲に向かってるって感じですね。特別に追加されたというインスト(ギター)曲が素敵。
Commented by jurassic_oyaji at 2009-02-13 08:40
sarahoctavianさん、こんにちは。
コノリーは、グラインドボーンのチェーザレも素敵でしたね。