おやぢの部屋2
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NEUKOMM/Requiem
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Jean-Claude Malgoire/
Cantaréunion
Ensemble vocal de l'Ocean Indien
La Grande Écurie et la Chambre du Roy
K617/K617210



1778年にザルツブルクで生まれ、1858年にパリで亡くなった作曲家、指揮者のジギスムント・ノイコムについては、モーツァルトの「レクイエム」の「リオ・デ・ジャネイロ版」というものがCDでリリースされたときに、その名前が紹介されていました。
その時に、そのバージョンを取り上げていたマルゴワールが、今度はノイコムその人の「レクイエム」を、「世界初録音」してくれましたよ。実は、彼の「レクイエム」に関しては、1999年にリリースされた草津音楽祭のライブ録音(CAMERATA)というのがあるのですが、今回はそれとは別の曲、なんでも、彼は全部で4曲の「レクイエム」を残しているのだそうです。
1838年にパリで作られたこの「レクイエム」は、なかなか変わったスタイルを持っています。本来は3声部の「無伴奏同声三部合唱」、つまり、男声三部合唱か女声三部合唱が歌うものとして作られていました。その合唱団は、さらに「1」と「2」という2つのパートに分かれた「二重合唱」の形をとっています。しかし、この「二重合唱」は、別に「マタイ」のように独立して歌われるものではなく、単に人数を増減するだけでダイナミック・レンジを調整するために設けられたものです。
ここには、本来の「レクイエム」の歌詞だけではなく、詩篇からの歌詞を用いた「De profundis」(詩篇130)という楽章が最後に加わります。さらに、この曲は、礼拝だけではなく、棺を運ぶときの「葬送行進曲」もセットになったものとして演奏されています。そこでは、行進の中でやはり詩篇からの「Miserere」(詩篇51)をテキストにした合唱も歌われることになっています。
本編の「レクイエム」の楽譜は、無伴奏合唱と、「アド・リブ」で合唱の声部をなぞったオルガン伴奏が指定されていますが、そこは演奏者の裁量で楽器を重ねることも許されています。ここでマルゴワールがとったのは、その「葬送行進曲」と同じ編成の楽器を加えるという方法でした。それは、コルネット、ホルン、トロンボーン、そしてオフィクレイドという楽器たちです。「オフィクレイド」なんて聞き慣れない名前、今では博物館でしかお目にかかれない楽器ですが、この頃はまだ広く使われていたキーのついた低音金管楽器です。それよりも不思議なのは、ここで指定されている「コルネット」は、正式には「コルネット・ア・ピストン」とクレジットされているもので、普通に「コルネット」といわれて思い浮かべるトランペットによく似た外観の金管楽器なのですが、演奏している写真を見ると、同じ「コルネット」でも、ドイツ語では「ツィンク」と呼ばれている、マウスピースのついたリコーダーのような楽器が使われているのです。ノイコムの時代には、もうこんな楽器は廃れてしまっていたはずなのに。女性下着では使われていましたがね(それは「コルセット」)。
そんな、マルゴワールがこだわった一風変わったサウンドは、しかし、なかなか荘重な響きをもたらしています。なんだかブルックナーを思わせるような新鮮な和声も見え隠れする中で、その金管楽器(+オルガン)だけの前奏は、確かな格調を保っていました。しかし、合唱が出てくると、そんな荘厳さは見事に消え失せ、なんともシロートっぽい世界が広がります。いったい、この合唱団はなんなのでしょう。ジャン・ルイ・タヴァンという合唱指揮者が持っている2つの合唱団の集合体ではあるのですが、そのうちの一つが「インド洋ヴォーカル・アンサンブル」、確かに写真ではアジア系のメンバーが認められる、なんとも怪しげな団体です。それはもう合唱としての体をなしていない、思わず「笑っちゃう」しかないような代物でした。そんな合唱団にかかってしまったら、存命中はあのベートーヴェンよりも高く評価されていたこともあったというノイコムの音楽など、全く伝わってくることはありませんでした。

CD Artwork © K617 France
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by jurassic_oyaji | 2009-02-18 20:18 | 合唱 | Comments(0)