おやぢの部屋2
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MOZART/Symphonies 25, 26 & 29
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Jérémie Rhorer/
Le Cercle de l'Harmonie
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ダムラウのバックでとてもセンスの良い演奏を繰り広げてくれていたジェレミー・ロレルと「ル・セルクル・ド・ラルモニー」が、晴れて独り立ちしたアルバムをリリースしました。前にも書いたように、パートの中心となるメンバーだけが固定されていて、適宜必要なメンバーが集められるという団体のようですが、その分、非常に自由度の高い風通しの良いアンサンブルが実現出来ています。こういうオリジナル楽器のオーケストラでは、そんな、いわば「フリー」な集団の方がフレキシブルなアイディアがどんどんわいてくるのかもしれません。確かに、色んな包み方がありますから(それは「風呂敷」)。
そんなメンバーは、今主流になっているコンサートをそのまま収録するという「ライブ録音」ではなく、フランスの静かな田舎にある古い建物を改修した録音会場に集まり、都会の喧噪から離れた伸び伸びとした環境の中で録音セッションを持ったということです。確かに、この会場の音響がとても素晴らしいことはこのCDを聴いても良く分かります。マイクのセッティングもあるのでしょうが、余計な残響は殆どなく、個々の楽器の持っているテクスチャーが克明にとらえられて、そこからはプレイヤーたちの息づかいまではっきり聞こえてくるような迫力が感じられます。
ここでは1773年、モーツァルトが17歳の時にザルツブルクで作られた3つの交響曲が演奏されています。有名な25番のト短調と、29番のイ長調の間に挟まれて、殆ど聴く機会のない26番があるのが、目を引きます。楽章が3つしかない昔ながらのスタイルの曲ですが、その楽章は続けて演奏されているので、まるでオペラの序曲のように聞こえます。演奏時間も全部で8分ちょっとしかありませんから、まさに「序曲」という意味で使われる「シンフォニア」に相当する曲なのでしょう。事実、モーツァルトは後にこの曲を、劇音楽「エジプトの王タモス」の序曲に転用しています。両端の楽章は変ホ長調ですが、真ん中のゆっくりした楽章がハ短調で作られていて、「悲しみ」を誘うような切々としたメロディがとても魅力的です。後の「フィガロの結婚」の第4幕の冒頭でバルバリーナによって歌われる悲しげなアリアに、とてもよく似たテイストを持っています。それに続く3拍子の軽やかな楽章は、まさにオペラのオープニングを予想させるような明るさです。
メイン(たぶん)の25番と29番とでは、その調性の違いが極めて明確に演奏に反映されていることには、驚きさえ感じられるのではないでしょうか。ト短調交響曲のゴツゴツとした表現、ささくれだったような音色が、同じ演奏家でありながら、イ長調交響曲ではなんともまろやかで暖かいものに変わっているのは、ちょっとすごいことです。それは、もちろん弦楽器の響かせ方から歌わせ方までまるで違えている結果なのでしょうが、もう一つの要因はそもそもの楽器編成の違いにあることにも気づかされます。ト短調交響曲には実はホルンが4本使われていたのですね。ベートーヴェンが3つ目の交響曲で初めて3本(3声部)のホルンを使うまでは、オーケストラでは、ホルンは常に2本しか使われていなかった、というのは殆ど「常識」と化していますが、本当はモーツァルトの時代でもしっかり「4本」使っていたこともあったのです(「グラン・パルティータ」も4本ですね)。この編成を最大限に活用して、ロレルたちは圧倒的なサウンドを作り上げました。第1楽章の再現部の前のホルン4本のクレッシェンド(これはちゃんと楽譜に指示があります)には、思わずびっくりさせられてしまいます。
イ長調交響曲では対照的にフランス人っぽい粋な表現があちこちに見られますよ。最後の最後に出てくるヴァイオリンの上向スケールのディミヌエンドって、とってもおしゃれ。

CD Artwork © EMI Records Ltd/Virgin Classics
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by jurassic_oyaji | 2009-02-20 20:02 | オーケストラ | Comments(0)