おやぢの部屋2
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MENDELSSOHN/Symphonies
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内藤彰/
東京ニューシティ管弦楽団
ALTUS/ALT163


「レコード芸術」という雑誌には多くのCDのレビューが掲載されていますが、中にはメーカーの資料の丸写しに過ぎない提灯記事もありますから用心が必要です。今年の2月号では、そんな提灯記事としてまさにこのCDが紹介されていました。その中で、このCDで用いられているメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」の、別の稿の楽譜の校訂に関してのインタビュー記事が、なんと2004年の「レコード芸術」にも掲載されているとあったのです。実は、この内藤彰さんという指揮者のお名前はごく最近知ったばかり。そんな昔から、大々的なインタビューがこの雑誌に載るほどの知名度があったなんて・・・。
と思いつつ、手元にあったバックナンバーをチェックしてみたら、確かにそんな記事はありました。しかし、それは別に内藤さんのインタビューではなく、その楽譜を校訂した高名な指揮者で音楽学者であるクリストファー・ホグウッドとのものだったのですね。なんという勘違い。確かにもとの記事を良く読めば、それがホグウッドとのインタビューであることはすぐ分かるのですが、そこから内藤さんが巻頭カラーのインタビューを受けているように錯覚させるというのも、こういう提灯記事の書き手の一つの資質なのかもしれませんね。
とにかく、そんな「ロンドン第2稿」という、実際に音になるのはこれが世界で初めてとなる楽譜を使った「フィンガルの洞窟」を皮切りに、メンデルスゾーンの交響曲第3番と第4番(これも、ブライトコプフの新しい楽譜が用いられています)が収められているこのライブCDでは、楽譜以外にも指揮者のこだわりが込められたものになっています。それは、弦楽器が全くビブラートをかけないで演奏して、作曲された当時のスタイルを「忠実に」再現している、という点です。ただ、オーケストラ自体はモダン・オーケストラ、使っている楽器もすべてモダン楽器ですから、「忠実」なのは単にビブラートをかけないという部分だけ、つまり、あのノリントンがシュトゥットガルト放送交響楽団と行っている一連の試みと全く同じスタンスなのですね。確かに、同じ雑誌に載っているこのCDの広告では「日本のノリントン」というフレーズが、大々的に踊っているのを見ることが出来ます。
幸い、そのノリントンが録音した同じ曲もすでにリリースされていますから、「本家」の演奏との比較には事欠きません。この内藤さんの「ノンビブラート奏法」が、ノリントンを超えるものなのか、あるいは単にノリントンの亜流に終わっているのか、そのあたりを検証してみるのはなかなか興味深いところではないでしょうか。
実は、内藤さんの名前を初めて知ったのは、2005年に行われたブルックナーの交響曲第4番の「コースヴェット版」というものの世界初録音ででした。それは、今まで「第3稿」として知られていた、弟子のフェルディナント・レーヴェによる改竄版(実際はレーヴェ以外の人も関わっていたそうです)が、ベンジャミン・コースヴェットという音楽学者によって綿密に校訂されたものが、2004年に「国際ブルックナー協会版」(いわゆるノヴァーク版)として出版されたものだったのですが、それがきっかけとなって、今まで低く見られがちだったこの稿への評価に変化が起こっているのだと言われています。実際に、内藤さんに続いて、オスモ・ヴァンスカとミネソタ管弦楽団も、この稿を使った演奏を行ったという見逃せない情報もありますし。
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しかし、このCD(DELTA/DCCA-0017)を聴き直してみると、ここでの内藤さんは、弦楽器にしっかりビブラートをかけさせています。もちろん、ノリントンは同じ曲(稿は違いますが)でもノン・ビブラート。 ほんの3、4年前は、彼はまだ「日本のノリントン」ではなかったのでしょうね。「日本のノリ弁当」ぐらいでしょうか。

CD Artwork © Tomei Electronics, Delta Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2009-02-22 22:20 | オーケストラ | Comments(0)