おやぢの部屋2
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TCHAIKOVSKY/Sinfonia No.4, Capricho Italiano
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John Neschling/
Orquestra Sinfônica do Estado de São Paulo
BISCOITO CLÁSSICO/BC 233



以前、ベートーヴェンの交響曲では、まさにサンバの国の人たちでなければ出来ないような、胸のすく演奏を聴かせてくれたブラジルのオーケストラ、サンバ交響楽団、いやサン・パウロ交響楽団が、音楽監督のネシュリングのもとで、今度はチャイコフスキーを録音してくれました。最近の録音ではちょっと醒めたところも見せていましたが、なにしろチャイコの「交響曲第4番」や、「イタリア奇想曲」といえば、まだまだ弾けるポイントが満載の曲ですから、期待は高まります。
まずは、「5番」や「悲愴」に比べたら、はるかに明るさが勝っている「4番」です。これはもう、冒頭のホルンのファンファーレからとてつもないハイテンションで迫ってくるものでした。最近は他のオーケストラで妙に気取って意味ありげな吹き方をしているような演奏ばかり聴いていたものですから、この直球勝負のパワーにはなんとも爽快な気分にさせられます。それを受けるトランペットも、負けじとのハイテンション、これだけでもうこの曲の方向性は決まったようなものです。
一方では、木管陣のしなやかなソロが目を引きます。フルートは突き抜けるような明るい音色、クラリネットも、潤んだ艶めかしさがたまりません。ダブルリードも開放的なオーボエと、ほとんどセクシーと言ってもいいファゴットという役者揃い。
しかし、そのオーボエが主役を演じる第2楽章は、そのソロに「憂い」を求める向きには少々不満が残るかもしれません。しかし、そのあっさり目のソロをバックアップする他の木管のお陰で出来上がった健康的な面持ちは、あるいは「in Mode di Canzona」というこの楽章の表記にはふさわしいものだったのかもしれません。
第3楽章の弦楽器のピチカートは、まさにこのオーケストラの面目躍如といった、浮き立つようなリズムに支配されたものでした。その、一瞬ともだれることのないドライブ感は爽快そのものです。そして、真ん中の部分での木管の鮮やかなこと。伸びやかに響き渡るピッコロは、ちょっとよそでは聴けないような素晴らしさです。
フィナーレも、そんなに速いテンポではないにもかかわらず、軽快感あふれる仕上がりになっています。ハイテンションの流れはそのままに、決して暴走することのないクレバーさも感じられるのは、やはりこのオーケストラの「洗練」のあらわれなのでしょうか。
続く「イタリア奇想曲」でも、めいっぱいの明るさが繰り広げられています。次々と現れるエピソードが、見事にイタリアの太陽に照らされたような輝きを放っているすがすがしさが、そこには満載でした。ところが、チャイコフスキーって、こんなに明るい音楽が作れる人だったのかという、驚きに似たものがこみ上げてきた瞬間、いきなり、なんともやり場のないような無表情な感触に襲われてしまったのです。そこは、エピソードの間をつなぐ経過的な部分、まるで借り物のような、ちょっと自分には似つかわしくないパッセージを並べたまでは良かったのに、その間を埋める作曲家としての「仕事」の部分では、つい地が出てしまったのでは、と思われるほどの、それはショッキングな体験でした。そんなチャイコフスキーの二面性を鋭く感じ取って、それが演奏に反映されてしまったのだとしたら、これはものすごいオーケストラです。
ブックレットには、彼らの本拠地「サラ・サン・パウロ」での本番の写真が載っています。ステージの後ろにも客席がある新しいホールなのですが、そこに座っているお客さんがとてもアトホームな感じなのですよ。恋人同士でしょうか。肩を抱き合いながら聴いているカップルもいますし、かと思うと、退屈して寝てしまった子どもを、優しく膝の上に乗せているお母さんもいたりして。そんな堅苦しくないお客さんにも、このオーケストラは育てられていたのでしょうね。

CD Artwork © Sarapuì Produções Artisticas Ltda.
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by jurassic_oyaji | 2009-03-04 20:00 | オーケストラ | Comments(0)