おやぢの部屋2
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TCHAIKOVSKY/1812 Overture etc.
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Yuri Simonov/
The Royal Philharmonic Orchestra
MEMBRAN/222885-203(hybrid SACD)



録音は1994年、SACDとしてリリースされたのも2005年と、決して「新譜」ではないのですが、なぜか今ごろネットを賑わせているものですから、興味が湧いてきました。ハズレでも実売976円ですから、惜しい気にはなりませんし。
サモン・プロモーション御用達というと、あまりよいイメージはわいてきませんが、ユーリ・シモノフは決して、そこの看板スターである怪しげなピアニストの伴奏ばかりやっているわけではありません。実際、彼はかつてはN響を指揮したこともあるごくまっとうな指揮者なのです。その時の映像を見たことがありますが、まさに「キザ」が燕尾服を着ているようなその指揮ぶりには、軽い陶酔感すらおぼえたものです。あ、燕尾服はあまり好きではないような丸っこい指揮者とは別人ですよ(それは「シモノ」)。
その時には、チャイコフスキーのバレエ曲を演奏していたはずですが、これはやはりチャイコフスキーの「名曲」を集めたアルバムです。「ロメオとジュリエット」、「イタリア奇想曲」、「1812年」、そして「オネーギン」からの「ワルツ」と「ポロネーズ」という、まさに王道を行くラインナップです。
このシリーズの他のカタログ同様、最初からSACDにしようと思って録音したものではないのでしょうが、多分ハイビットのPCMをDSDにコンバートしたのでしょう、CDレイヤーと比べると、明らかにそのクオリティは高いものになっています。さらに、スタジオで録音されたいかにもマルチマイクという音は、かつてのDECCAあたりでよく聴くことの出来た、各パートがとても明瞭に分離して聞こえてくるという「ハイ・ファイ」感あふれる爽快なものでした。それは、DECCAでも、例えば晩年のストコフスキーが好んで使った「フェイズ4」のような、もしかしたら今の時代には少し敬遠されそうなけばけばしさも持ち合わせている録音です。
そんな「派手」な録音は、ここで取り上げられている「派手」な曲調のチャイコフスキーと、そして、もちろん「派手」なことは大好きに違いないシモノフの芸風とは見事に合致していました。この前のサン・パウロ交響楽団のような及び腰のところなど一切ない、最初から最後までハイテンション、どこを切り取ってみてもチャイコフスキーの魅力がフルにあふれているという素晴らしいアルバムに仕上がっていますよ。
この中ではちょっと「寝技」っぽい「オネーギン」からのナンバーが、中でも格段の完成度を持っています。「ワルツ」というのは、オペラでの第2幕の前奏曲と、それに続く舞踏会のシーンですが、前奏曲に現れる「オネーギンのテーマ」での、イ長調(ド♯ー、シ、ラ)→減和音(ラー、ソ♯、ファ♯)→イ長調(ミ)というコード進行の下降スケールの愁いに満ちた味わいはどうでしょう。続く「ワルツ」などは、まさに「キザ」の極み、「ポロネーズ」のホルンの合いの手で大見得を切っているところなどは、その指揮ぶりが眼前に広がるほどのかっこよさです。
もちろん、最高に楽しめるのが「1812年」であることは、ネットでもお馴染みのところ。ここでは、新しいエピソードが始まる前の、ほんのちょっとした「間」が、とても効果的に使われています。冒頭のチェロのコラールから常にとびきりのごちそうを味わっていたものですから、その次にはどんな料理が出てくるのか、という期待が、この「間」でワクワクするほど高まってくるのですよ。それは、エンディングの「大砲」と「鐘」への期待へとつながります。最初の「数発」は、かつての「名盤」、TELARCのカンゼル盤の迫力には到底及ばないのにははっきり言って拍子抜けでした(しかし、あちらは肝心のオケの音がしょぼ過ぎます)。しかし、「鐘」には大満足、そして、最後の最後ではまさに度肝を抜かれたというか、笑いが止まらなかったというか。その「一発」、これはぜひ、実際に聴いて頂きたいものです。

SACD Artwork © Membran Music Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2009-03-06 19:43 | オーケストラ | Comments(0)