おやぢの部屋2
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LIGETI/Lux aeterna
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Susanne van Els(Va)
Daniel Reuss/
Capella Amsterdam
musicFabrik
HARMONIA MUNDI/HMC 901985



リゲティの「ルクス・エテルナ」の最新録音、歌っているのはこのサイトには初登場の「カペラ・アムステルダム」という、1970年に創設されたオランダのアンサンブルです。1990年に、かつてはリアス室内合唱団、現在ではエストニア・フィルハーモニック室内合唱団の指揮者を務めているダニエル・ロイスが指揮者に就任したことにより、この団体はフル・タイムのプロの合唱団として新たに出発、今では世界中の音楽祭などで大活躍しています。「ラ・フォル・ジュルネ」で日本にやってきたこともあるね
「ルクス・エテルナ」という曲が語られるときには、必ずといって良いほど「キューブリックの『2001年』のサントラに使われた曲」、という「まくらことば」がついて回ります。確かに、あの映画であのように印象的な使い方をされたからこそ、この曲は、そしてこの作曲家は現代の音楽としては破格の待遇で世に知られることにはなりました。しかしそれは「ツァラトゥストラ」同様歴史の必然、もしかしたら、あの映画がなかったら、現在では全く別の局面を、これらの曲は迎えてしまっていたかもしれなかったのでは、という考えは、タイム・パラドックスを起こすだけのものでしかありません。
サントラに使われた、この曲の初録音となるゴットヴァルト盤(WERGO/1966年)のある種おどろおどろしいたたずまいは、確かにこの映画には見事に合致した不気味さを現したものではありました。しかし、作られてから40年以上も経った頃には、この曲は無伴奏合唱作品の「古典」としての地位をすでに確立していました。日本のアマチュアの合唱団がコンクールの自由曲に選んで演奏するというような事態が勃発した時点で、ついにこの曲は「2001年」からの呪縛から逃れることが出来たのです。
このアルバムでは、リゲティの他の作品の間にこの曲が挟まれるという、ユニークな構成がとられています。6曲から成る「無伴奏ヴィオラソナタ」の前半の3曲がそれ、おそらく自然倍音を素材にしたのでしょうか、平均率とは微妙に異なる音程を持った第1曲に導かれて、「ルクス・エテルナ」が始まります。若いメンバーが集まっているこの合唱団は、ここでなんともしなやかな「ルクス・エテルナ」を紡ぎ出しています。まるで虹の色のように刻一刻色合いを変えて輝くクラスターの、なんと美しいことでしょう。そう、ここには、「永遠の光を彼らに照らして下さい」というテキストの「意味」が、見事に伝わってくるような確かなメッセージが込められていることを誰しもが感じられるはずです。最後にアルトが歌う「luceat」という言葉には、なんという深さが宿っていることでしょう。
ヴィオラソナタの他の楽章に挟まれているのは、1982年に作られた、やはり無伴奏の合唱曲「ヘルダーリンによる3つのファンタジー」です。「ルクス・エテルナ」とは全く作風の異なる曲ですが、ここでも合唱団は「クールな共感」をもって、見事な演奏を聴かせてくれています。
カップリングが、リゲティと同世代、1925年生まれのオランダの作曲家、ロバート・ヘッペナーの「岩の中へ」という、1992年に作られた6曲の合唱曲です。ある意味保守的な作風だったため、リゲティやブーレーズなどが現れた1960年台の「前衛」シーンには付いていけず、ドロップアウトをしてしまった過去を持つ人ですが、こうしてリゲティの作品と同時に聴かれると、なにか懐かしい思いに駆られるのと同時に、リゲティとは別の意味の新鮮さも感じ取ることが出来ます。現代の音楽は何が本当の主流だったのか、そんなことにも思いを巡らすような、これは「前提的」な作品でした。
最後に、「レクイエム」のテキストがらみで、「ルクス・エテルナ」に続く「リベラ・メ」のグレゴリオ聖歌が歌われているのも、粋な計らいです。

CD Artwork © Harmonia Mundi s.a.
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by jurassic_oyaji | 2009-03-08 22:17 | 合唱 | Comments(0)