おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Symphony 4/Original Version
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Kent Nagano/
Bayerisches Staatsorchester
SONY/88697368812(hybrid SACD)



ブルックナーの交響曲第4番の初稿版は、ついこの間シモーネ・ヤングに続いてノリントンのCDがリリースされたばかりだというのに、またまた新録音がSACDで登場しました。なんと、録音されたのはすべて2007年(それぞれ12月、4月、9月)。
しかし、このレーベルは少なくとも国内盤に関しては、SACDに対しては非常に消極的なような印象を受けていたので(ブルーレイなんたらには、えらく熱心なようですが)、これはちょっとした驚きでした。やはり、何たって自社で開発したものですから、また本腰を入れようとしているのでしょうか。と思って録音スタッフを見てみると、プロデューサーもエンジニアも、どこかで聞いたことのあるような名前、そう、それはミュンヘンを拠点に活動、バイエルン州立歌劇場とも密接な関係にあるFARAOレーベルのスタッフではありませんか。録音された場所もFarao Studiosという、彼らの本拠地です。このレーベルだったら、確かに新譜はすべてSACDですから、納得です。と言うことは、FARAOSONYの傘下に入ってしまったのでしょうか。あるいは、単にアーティストの権利などの関係で、このような形になったのでしょうか。いずれにしても、最近の「グローバル化」によって、レーベルの実体というものは非常に分かりづらくなっています。なんと愚弄ばるなことでしょう(意味不明)。
録音会場はコンサートホールではなく、文字通りのスタジオ、600平方メートルの広さで、天井の高さは8.8メートルあるそうです。ですから、当然「ライブ」ではなく、今では非常に珍しくなった本当の意味での「スタジオ録音」ということになります。しかし、このスタジオは適度に長い残響が付いた、非常に美しい音がするところのようです(最初にデータを見ないで聴いていたときは、普通のホール録音だと思ってしまいました)。SACDと相まって、その「FARAOトーン」は、弦楽器の柔らさや、金管楽器の力強さ、そして特筆すべきは低音の深さを、余すところなく伝えてくれています。
ケント・ナガノの演奏は、前回のノリントンとはまさに正反対のアプローチを、この稿に対して試みているように思えます。あちらが「粗野」であるとすれば、こちらはまさに「洗練」の極致ではないでしょうか。なんといっても、たっぷりとしたテンポで悠々と歌い込むさまは、なんとも言えない広がりを、この曲に与えています。ちなみに演奏時間は、ノリントンの「60分」に対して「75分」、これは、この稿のまさに「最速」と「最遅」ではありませんか。実際、この2つの演奏はまるで別の曲のように感じられるほどです。
そんなテンポであるにもかかわらず、ケントの演奏が決して「遅い」と感じられないのは、その中で彼が実に細やかな表情を繰り出しているからなのでしょう。それは、そもそも曲の開始の時の「sempre pp」という指示の弦楽器のトレモロが、ホルンのソロに寄り添うように豊かな表情を付けていることからも分かります。そして、そんなていねいな演奏の中から、今まで殆ど気づくことのなかったような新鮮なフレーズが味わえることになります。例えば、第1楽章の中にはすでに第4楽章の、この稿でなければ聴けないテーマの萌芽が存在していたことにも気づかされます。そのように、個々のパーツをていねいに歌い上げることによって、全体の構造のまさに「前衛的」な作られ方を知らしめるのも、ケントの目論見だったのかもしれません。第3楽章は、実はかなり複雑なリズム構造を持っていてそれが、第4楽章の伏線としての役目をしっかり持っていたことも、ここで気づかされました。
それにしても、この楽章のトリオの部分のなんと美しいことでしょう。低弦の絶妙のピチカートを聴くにつけ、これを別なものに差し替えてしまったブルックナーは、なんともったいないことをしてしまったのだろうという思いにかられてしまいます。

SACD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2009-03-12 20:01 | オーケストラ | Comments(0)