おやぢの部屋2
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Aki Takahashi Piano Space
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高橋アキ(Pf)
TOWER RECORDS/QIAG-50035-37



これも、この間のゴールウェイ同様タワーレコードによって初めてCD化された貴重なアイテムです。オリジナルは1973年にLP3枚組、立派なボックスに入ったセットで発売されました。「芸術祭参加作品」という、企画の段階からとても力の入ったレコードで、3枚の内容は、日本人の作曲家が2枚、外国の作曲家が1枚、日本人の作品の中にはこのレコードのために新たに委嘱された曲が入っている、というのがすごいところです。付属のブックレットも分厚いものだったような記憶があります(すでに中古屋行きになっていて、手元にはありません)。これは70年代、いわば「現代音楽バブル」の時代の、一つの産物ととらえるべきものでしょう。もちろん「バブル」とは言ってもごく狭~い世界の中の出来事ではありましたが。
「完全復刻」されたこのCDも、LPと全く同じコンテンツが3枚組になっています。まず、その3枚目、当時の現代音楽シーンの寵児たち、メシアン、ブーレーズ、シュトックハウゼン、ベリオ、そしてクセナキスたちの作品は、現在ではすでに「古典」としての重みを持ち得ているものばかりです。そんな中にあって、ブソッティの、全編ピアノの内部奏法だけ、という画期的な作品「Piano pieces for David Tudor 3」は、今でもそのアイディアの斬新性は失われてはいません。
日本人の作品では、「カリグラフィー」やら「アルロトロピー」といった、なんとも頭でっかちなタイトルが、恥ずかしいほどのインパクトを与えてくれます。中でも、三枝成彰(当時は「成章」)の、作品などは、なんと、そもそも文字としてタイプしたり、発音することすら出来ないというものすごいものでした。
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仕方がないので、画像で表示です。「元プリンス」みたいな、読む人を完全にあざ笑うようなタイトル、付けたご本人は、さぞ気持ちが良かったことでしょう。
LP時代に聴いたときには、タイトル同様その音楽もまさに刺激的なものでした。ピアノ、プリペアド・ピアノ、エレクトリック・ピアノ、コンボオルガンという、実に微妙な楽器選定がまず「時代」を感じさせるものですが(シンセサイザーはすでに実用化されていましたが、なぜか「クラシック」の音楽家はそれを敬遠していたものです)、それを差し引いても、多重録音でそれらの楽器を同時に演奏することによって開かれた音響空間には、確かな「新しさ」を感じたものです。
30年以上の時を経て同じ作品を聴いたときには、そこからはそんな先進性などはきれいさっぱり消え去っていました。精一杯新しい音響を追求していたはずのものは、今となっては実に心地よい「ヒーリング・ミュージック」のように聞こえてきます。曲の前半、エレピで演奏されるプレーンチャントのような音型が、そんな雰囲気を醸し出して心を和ませるよう。現在まさにそのような音楽を量産している三枝の資質は、「尖っている」と思われたあの頃と、本質的には何も変わっていなかったことに気づかされます。最後のあたりに出てくるピアノによる細かい音符のパターンも、メシアンの鳥の声そのものですし。いや、これは現代の「サンプリング」というテクノロジーのさきがけだったのでしょうか。
当時「前衛音楽」のリーダー的存在だった一柳慧の「ピアノ・メディア」も、その頃の最先端の流行を取り入れた、まさにスティーヴ・ライヒそのものの様な「ミニマル・ミュージック」でした。そんな変わり身の早い作曲家の末路は、今では誰でも知っています。
そんな、今となっては顧みられることのない多くの作品が産まれたのが「バブル」の時代なのでしょう。今や還暦を過ぎてなんともロマンティックにサティを弾くようになった高橋アキは、まだ20代だった頃の彼女の晴れがましいファーストアルバムを、さてぃ、どのように聴くことでしょうか。

CD Artwork © EMI Music Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2009-03-18 20:04 | 現代音楽 | Comments(0)