おやぢの部屋2
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PUCCINI/Madama Butterfly
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Angela Gheorghiu(Butterfly)
Jonas Kaufmann(Pinkerton)
Antonio Pappano/
Orchestra e Coro dell'Accademia Nazionale
 di Santa Cecilia
EMI/2 64187 2



詳しく調べたわけではありませんが、最近作られているオペラのCDと言えば、ほぼ100パーセント実際の公演の模様を収録した「ライブ録音」になっているのではないでしょうか。しかも、「音だけ」のCDではなく、映像も付いたDVD(もしくはブルーレイ)の方が、はるかに多くリリースされているはずです。スタジオに歌手とオーケストラを集めてのセッションを組もうとすれば、とてつもない経費がかかります。それよりはすでに出来上がっているものをそのまま収録する方がはるかに安上がりでしょうし、「生」につきものの事故やノイズも、何種類かのテイクを巧みに編集する技術が進んだことによって解消出来るようになっていますしね。
ですから、今時映像も付かないスタジオ録音が行われているなどとは、ちょっと信じがたいことでした。まだまだ、良いものを作ろうとする人たちは健在なのだ、と思いたいものです。ここでの主役たち、ゲオルギウとカウフマンが実際にオペラハウスで蝶々さんやピンカートンを演じるのは、まだまだ先のことでしょうから。そんな、とても実現しそうにない顔ぶれでオペラを録音するという「ドリームキャスト」が実現出来るのも、まさにスタジオ録音ならではのことなのですよね。それにしても、EMIがこの「蝶々夫人」を最後にスタジオで録音したのが、43年前だというのには驚いてしまいます。
そんな力の入った企画、出来上がった製品もなかなか力の入った立派なボックスとなっています。厚さが2.5センチもあるボール紙の箱ですからね。ただ、ブックレットの厚さが6ミリですから、箱の中は1センチ近くの空間が出来てしまい、振るとカタカタと音がして、最初はCDが外れてしまったのかと思ってしまいましたよ。この箱に見合うぐらいの分厚いブックレットだと良かったのですがね。それよりも、その箱を飾るこのゲオルギウの写真が、見事に「左前」の打ち合わせの和服を着ているものですから、「やっぱりな」と思ってしまいます。西洋人に和服の正しい着方を教えるのは、朝青龍にガッツポーズをやめさせるよりもはるかに困難なことなのでしょう。
いや、そもそもこのオペラでの「日本」の扱いは、まさにそんな着付けと同じ次元のものなのでしょう。なんといっても、「日本人」がそれを聴くときには必ず起立することを強要される「君が代」という極めて特別な歌が、なんとも安直に引用されているのには、心配にさえなってきます。「教育関係者」は、こういうものは取り締まったりはしないのでしょうかね。登場人物も、おかしいですよね。「ボンゾ」ってなんなのでしょう。おそらく「坊主」なのでしょうが・・・。「ゴロー」の職業は「il nakodo」、それを対訳で見るとドイツ語は「der Nakodo」フランス語は「le Nakodo」ですから、なんのことなのか(さいわい英語だと「the marriage broker」)。それから、指揮者の末廣誠さんが雑誌のエッセイにお書きになっていましたが、蝶々さんが肌身離さず持っているのが「Ottokè」という「人形」、これは「仏」なんですってね。ですから「仏像持ち歩いている日本人なんて、どこにいるんだあ!」と、末廣さんに突っ込まれることになるのです。そんな些細なことはほっとけって?ごもっとも。何と言っても、プッチーニにとってはここは単なる「未知の異国」なのですからね。
いや、演奏は堪能させて頂きましたよ。スタジオ録音ならではの、細かい音場設定、アメリカ鑑の大砲の音もリアルでしたね。そして、ゲオルギウの蝶々さん、実に自然体で等身大の女性という感じがひしひしと伝わってきます。お目当てのカウフマンは、第1幕などはちょっとこの役にはもったいないような立派な声だったので、これはミスキャストかな、と思ってしまいました。ピンカートンって、本当に男の風上にも置けないようなダメな奴ですからね。しかし、最後の最後で「Butterfly!」という、とことん情けない声、これで不満はすっかり消え去りました。素晴らしい!

CD Artwork © EMI Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2009-03-20 19:39 | オペラ | Comments(0)