おやぢの部屋2
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LUKASZEWSKI/Via Crucis
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IestynDavies(CT), Allan Clayton(Ten)
A. Foster-Williams(Bar), Roger Allam(Nar)
Stephen Layton/
Polyphony
Britten Sinfonia
HYPERION/CDA67724



ポーランドの作曲家、ウカシェフスキについては、以前やはりレイトン指揮の合唱曲をご紹介したことがありました。今回は、2000年に作られた、4人のソリスト(そのうちの1人はナレーター)と合唱、そしてオーケストラのための「Via Crucis(十字架への道)」です。そんなタイトルの曲では、リストのものが有名ですが、これも基本的には同じ構成を持っています。ただし、リストの曲の場合はキリストが十字架につけられて亡くなるまでの14の情景を描いていたのに対し、この作品はそのあとの「復活」の場面を加えて、全部で15の「ステージ」が用意されています。
その15のステージと、最初に置かれたイントロ、そして最後のエンディングが、この曲の全ての構成要因、それらは非常に分かりやすい形で独立した情景をあらわすとともに、相互に有機的な(ライナーには「数学的」という言葉も見られます)結びつきを見せています。
まず、金管楽器や打楽器が多用された、華々しいオーケストラの響きによる「Via Crucis」というイントロが、圧倒的なインパクトを与えてくれます。それに続くそれぞれのステージは、いわば「額縁」のように、決まったパターンで囲まれています。まず最初には、力強いオーケストラ・ヒットが、ステージのタイトル数だけ(つまり、第5ステージだと5回)打ち鳴らされ、それがいわば「開始の合図」となって、そのシーンが始まるという、最初の枠組みが示されます。その後は、まず男声だけの荒々しいステージのタイトルの「叫び」、そして、対照的に柔らかな「Adoramus te」という女声の美しいハーモニーが鳴り響きます。その後がそれぞれのステージの自由な部分、朗読やレシタティーヴォ、そして合唱で、さまざまなシーンが描かれます。この部分、テキストには受難曲でお馴染みの福音書なども使われていて、まさに受難曲そのもののようなリアルで劇的な音楽が繰り広げられます。その部分の締めくくりが、混声合唱による「Qui passus est pro nobis」、そして、最後にオーケストラだけで演奏されるのが、イントロの後半部分で提示されていた、おそらくイエスの歩みをあらわすのでしょう、ゆったりとした行進の音楽です。
そんな、ある意味パターン化されたユニットが15回繰り返されることになるのですが、その内部のそれぞれに異なるパーツだけではなく、それらの「額縁」自体も微妙に変化していくのがエキサイティングなところです。最後の行進の音楽は、テーマ自体は同じなのに、次第にオーケストレーションが変わって(更新されて)、徐々に重苦しい様相を呈してきます。さらに、第12ステージはイエスが十字架上で息絶えるシーン、ヨハネ福音書の、まさにバッハの受難曲では「Es ist vollbracht」に相当する部分が繰り広げられるのですが、その後の第13ステージ以降では、最初にステージ数をあらわす音がそれまでの暴力的なパルスではなく、安息感に満ちたレガートなものに変わるのが、印象的です。
最後の、まさに希望に満ちた「復活」のシーンの後のエンディングは、想像通りイントロと全く同じものでした。こうして、作品全体にも「額縁」が用意されていたことを、聴き手は知るのです。
ウカシェフスキの音楽は、難解な和声も自然に聞かせるとても美しいもの、オーケストラも声楽も、とてもヴァラエティに富んだ大きな振幅を持っています。ハイテンションがウリの「ポリフォニー」は、ここでもその幅広い表現力を存分に発揮して、その美しくも厳しい音楽に確かな造形を施しています。
おそらく、この曲には単なる宗教的な典礼音楽を超えた、普遍的なメッセージが込めらているはずです。アウシュヴィッツの囚人服まで描かれているこのジャケットの絵が、それを端的に語っています。

CD Artwork © Hyperion Records Limited
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by jurassic_oyaji | 2009-03-22 21:04 | 合唱 | Comments(0)