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BACH, HOLLIGER/Works for Flute Solo
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Felix Renggli(Fl)
GENUIN/GEN 88129



スイス生まれ、ペーター・ルーカス・グラーフやオーレル・ニコレに師事をしたフルーティスト、フェリックス・レングリが「ソロ」、つまりフルート1本だけで演奏された曲ばかり(一部、アンサンブルもありますが)を集めたアルバムです。曲は、バッハ親子と、オーボエ奏者としても有名なハインツ・ホリガーという、「バロック」と「現代」のレパートリーなのが、ユニークなところでしょうか。もっとユニークなのは、ソリストのレングリは、現代曲では通常のフルートやアルトフルートを吹いているというのに、バロックではちゃんと当時の楽器であるトラヴェルソを吹いていることです。ソリストとして身を立てたモダンフルート奏者がトラヴェルソまできちんと吹けるのは極めて希なこと、彼の場合、果たして「二足のわらじ」は履きおおせているのでしょうか。
しかし、父バッハの「パルティータ」といい、息子バッハの「ソナタイ短調」といい、彼のトラヴェルソは完璧なバロックの音を聴かせてくれていました。それは、モダンフルート奏者の場合必ず付いてしまうビブラートが一切ない、実に素朴な音でした。ただ、表現のダイナミックスはちょっと「トラヴェルソ離れ」しているのは、感じないわけにはいきません。それと、例えば「パルティータ」の「サラバンド」などでは、繰り返しで律儀に装飾を施して演奏しているのですが、それはちょっとバロックの様式からは離れているような気がしてなりません。なにか、自然に出てきたのではない、頭の中でこねくり回したような作為的なものが感じられてしまいます。おそらく、それは「装飾」というよりは、現代風の「インプロヴィゼーション」に近いものなのかもしれません。
ホリガーの作品では、1曲「トリオ」がありました。ピッコロ、フルート、そしてアルトフルートのための曲です。なんでも、これはホリガーのバーゼル交響楽団での同僚だったピッコロ奏者の追悼のために2005年に作られたものなのだそうです。フルートとアルトフルートの伴奏に乗って、ピッコロが終始大活躍をする、というとても楽しい曲です、鳥のさえずりのような華やかなフレーズが、いかにもピッコロ奏者が喜びそうなものになっています(ここではレングリは、アルトフルートを担当)。
もう1曲、他の楽器が加わったものが、1984年の「Schlafgewölk(『眠りの雲』、でしょうか)」という作品です。レングリのアルトフルートと共演しているのが、なんと日本のお寺で使われていたり、ご家庭の仏壇には普通に備わっている「きん」という「打楽器」です。そんな、あたかも仏教の礼拝に参加しているような面持ちの中で、まるで「お経」のように瞑想的なアルトが流れるという、ホリガーにしてはちょっと意外な曲想です。
そう、彼の場合、いかにも「現代音楽」という、さまざまな特殊奏法を駆使した「難解な」というか、「勝手にやってたら」というような作品をすぐ連想してしまいがち、もちろん、そんな作品もこのアルバムには含まれていますが、実は彼の芸風はかなり幅広いものだったのですね。そして、そんな中には1996年に完成した「ソナタ」のように、ちょっとユーモラスなものまで含まれています。「アルマンド」とか「クーラント」といった舞曲のタイトルが付いた12曲の小さな曲から成っていますが、それぞれが例えばさっきのバッハの「パルティータ」などの、見事なパロディになっているのですよ。組曲第2番の「バディネリー」をパロったと思われる「Badines!...Ries!」などは、ホイッスル・トーンのはかなげな音であのテーマが演奏されるのですから、まさに抱腹絶倒です。
最後に収録されている「Petit Air」は、盟友オーレル・ニコレの75歳の誕生日を祝った曲、もちろん、その5年前に武満徹がやはりニコレのために作った彼の遺作「Air」へのオマージュでしょう。仏前に供えるという(それは「おまんじゅう」)。

CD Artwork © GENUIN Musikproduktion, Leipzig
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by jurassic_oyaji | 2009-03-24 23:54 | フルート | Comments(0)