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The Art of Paula Robison
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Paula Robison(Fl)
VANGUARD/MC 123



アメリカの美人フルーティスト、ポーラ・ロビソンがかつて多くのレコードを録音していたVANGUARDレーベルから、2枚組のベストアルバムがリリースされました。もちろん、このレーベル自体は今ではどこかに身売りして実体のないものになっているのでしょうね。このアルバムも、リリースにあたっては彼女自身のレーベルであるPERGOLA RECORDINGSが関与しているようです。
そんな、マイナーなレーベルでの録音活動のせいでしょうか、最近はとんと名前を聞かなくなってしまったロビソンですが、このCDのライナーにあった彼女の公式サイトによれば、60歳代後半となった今でも相変わらずお美しく、元気で活躍しているようですね。
1941年生まれのロビソンが、バーンスタインに見いだされて、ニューヨーク・フィルとの共演を果たしたのは、彼女が20歳の時でした。バーンスタインが、若い演奏家をソリストに迎えて1962年に録音した「動物の謝肉祭」の中で、「大きな鳥籠」の華やかなソロを吹いているのが彼女です(そこでは、若きゲイリー・カーがコントラバスで「白鳥」を演奏しています)。その後、アメリカ人としては初めてジュネーヴ国際音楽コンクールで優勝、まさにアメリカを代表する若手のフルーティストとして華々しい活躍をすることになりました。
通常のレパートリー以外に、彼女は、現代の作曲家にフルートのための作品を数多く委嘱し、もちろん、彼女が世界初演を行っています。その中には、武満徹の「I Hear the Water Dreaming」や「巡り」といった曲も含まれています。今でも、オリヴァー・ナッセンに新しい協奏曲を委嘱しているのだとか。さらに、武満の「Voice」や「Air」をアメリカで初演したのも、実は彼女だったのですね。「現代音楽」のシーンでも、彼女は重要な役割を果たしていたのでした。
このベストアルバムには、VANGUARD時代にリリースされた6枚のアルバムからのナンバーが収められています。最も古いものが1974年に録音されたラヴェルのトリオ、そして、最も新しい録音は1990年の、なんとブラジルのミュージシャン(多分。なにしろ、このベストでは共演者のクレジットが全くありません)との共演で、ブラジル音楽を演奏しているものでした。いえ、ヴィラ・ロボスとか、そういうのではなく、ボサノバとかショーロとか、そっちの音楽ですね。花に水をやるやつ(それは「ジョーロ」)。実は、このベストアルバムのうちの半分ぐらいはすでに聴いたことがあるのですが、これは初めて聴くものでした。というより、彼女がこういう音楽も演奏することすら初めて知りました。それこそゴールウェイでもない限り、こういうノリの音楽を自然に演奏するのはクラシックのフルーティストにとってはかなり難しいことなのですが(パユなどは、かなり悲惨でしたね)、彼女はその技巧の冴えに物を言わせて実に見事にこれらの「ポップス」に命を与えていました。「ティコ・ティコ」などはピッコロでちょっとユーモラスな味を出すほどの余裕まで。バッハの「無伴奏パルティータ」のラテン風アレンジも、とてもクラシック奏者が演奏しているとは思えないようなノリの良さです。ここでは、あのアルマンドが超高速で吹かれているところに、ギター奏者でしょうか、スキャットでユニゾンを入れているのも素敵、そう言えばロビソンもジャズ風のムラ息の多い吹き方をしているような。
面白いことに、そんな曲の間に別のアルバムからの本物のバッハやヘンデルのソナタが入るという、粋な編集がされています。こちらは、モダン・チェンバロやモダン・チェロを使った元気の良い演奏、ヘンデルの早い楽章でチェンバロのリュート・ストップとそのチェロが生き生きとしたリズムを刻む中で吹かれるフルートは、まさに時代もジャンルも超えた颯爽たるものでした。

CD Artwork © Musical Concepts, USA
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by jurassic_oyaji | 2009-03-26 20:54 | フルート | Comments(0)