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知ってるようで知らない「音楽コネタ」おもしろ雑学事典
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瑞穂れい子著
ヤマハミュージックメディア刊
ISBN978-4-636-84451-1


数限りなく出版されている「雑学本」というか「トリビア本」の中には、もちろんクラシック音楽に関するものもあります。これもそんなものの一つ、もしかしたら、本当に初めて知るような新鮮な「ネタ」があるのかもしれない、と思って読んでみることにしました。
確かに、世の中にはまだまだ知らないことは多いものです。この本の中では、思わず「そうだったのか!」と膝を打つ様なことをいくつか発見することが出来ました。一番ウケたのは、「山田耕筰が名前の『作』を『筰』に変えたのは、頭がハゲていたからである。」というネタです。やはり偉くなる人は、こんな誰も知らないような字を使うものだな、と今までは思っていたのですが、実はこんなことだったとは。確かにこれは「作」の上に「ケ」が2本生えているというねたに(めったに)ない字ですね。
もう一つ、「ジョン・ケージの有名な『4分33秒』という曲名には、こんな意味がある。60(秒)×4(分)+33(秒)=273で、あらゆる物質が凍る絶対零度をあらわしている。」というものも、信憑性はともかく「なるほど」と思わせられるような説得力のある情報です。
しかし、そのうち「左利き用のヴァイオリンはない」などというネタが出てくると、その「信憑性」はかなり怪しげなものになってきます。そもそもヴァイオリン(あれっ、こちらのコメントにあるように、この出版社の刊行物の中では「ヴァイオリン」は「バイオリン」と表記しないといけなかったのでは)を顎と左肩の間に挟んで演奏するというスタイルはごく最近確立されたもので、その前は膝の上に立てて弾いていたりしたのですからね。実際に左腕に弓を持って演奏している人を、少人数のアンサンブルで見たことだってありますよ(オーケストラでは邪魔になりますからね)。
「現在のCDの収録可能時間では、クラシック曲のうち95%しか完全に録音できない。」というのも、なんだかなあ、という感じではないでしょうか。そもそも筆者の言う「収録可能時間」が「7442秒」というのがちょっと怪しげ、今では7958秒まで収録出来るのは「常識」です。しかし、それだけの「収録可能時間」であっても、「ブルックナー/マーラー事典」(東京書籍 1993年刊)の演奏時間に従えば、例えばマーラーの9曲の交響曲のうち、「完全に録音できる」ものは3曲しかないのですから、33.3%しかないことになりますね。ワーグナーの舞台作品にいたっては0%ですよ。
極めつけは、「ホルストは冥王星の存在を知らなかった。当然、『惑星』にも冥王星は入っていない」です。冥王星が「惑星」ではなくなってしまったことが大々的に騒がれたのはごく最近のことなのに、こんな間抜けなことを書くなんて。と思って、奥付をよくよく見てみたら、小さな字で「本書は、既刊のものをタイトルと装丁を変更して再発売したものです」と書いてあるではありませんか。なんと言うことでしょう。これは、さも新刊のような扱いですが、昔の本をただ新しく見せかけて出しただけのものだったのですよ。それ自体は悪いことではないのでしょうが、普通そういうときには中身も少しは見直すものなのではないでしょうかねえ。いや、確かに「ベンチャーズ」のところに、そんなことを匂わせるような不自然な文章はありましたが、このホルストにまでは目が届かなかったのでしょうね。それにしても、調べて分かった初版時(調べなくても分かるようにきちんと印刷しておくのが最低限のモラルだと思うのですが)にはすでにコリン・マシューズが作った「冥王星」があったのですから、そのぐらいは知らないと、「雑学家」の名が泣こうというものです。

Book Artwork © Yamaha Music Media Corporation
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by jurassic_oyaji | 2009-04-01 20:13 | 書籍 | Comments(0)