おやぢの部屋2
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KARG-ELERT/Das geistriche Chorwerk
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Stefan Engels(Org)
Gregor Meyer/
GewandhausChor
Vocalconsort Leipzig
GENUIN/GEN 88130



ジークフリート・カルク・エラートというドイツの作曲家は、1877年に生まれて1933年に亡くなったといいますからマーラーの一世代あとの人、いわゆる「ロマン派」はもう殆ど終わりを迎えた頃に活躍していました。あまり馴染みのない名前でしょうが、フルート吹きにとっては、かなり難しい曲やエチュードを作った人、ということで認知されているはずです。フルート1本で演奏する「ソナタ・アパッショナータ」などは、リサイタルでは良く取り上げられる作品ですね。「バッハの街」ライプツィヒの音楽大学の教授を務めた人で、オルガン曲もたくさん作っているということです。ただ、作風がちょっと「人工的」なため、大学の同僚からは少し距離を置かれていた、などということが、ライナーには書かれていました。確かに、「ソナタ・アパッショナータ」はなんともつかみ所のない曲のような印象があります。なにしろこの顔ですからね。いかにも頭でっかちなつまらない曲しか書けないような人のように思えては来ませんか?
そんなカルク・エラートの宗教的な合唱曲を集めたアルバムです。買ってはみたものの、いったいどんなものなのか、果たして、最後まで退屈しないで聴いていられるのか、そんな不安がかるく脳裏をよぎります。なんせこの顔ですから。
確かに、ここで聴くことの出来る彼の作品は、かなりユニークなものでした。何よりも編成がとても変わっています。「受難カンツォーネ『キリストの埋葬』」という曲では、ソプラノ・ソロに合唱、そこにオルガンと、そしてコール・アングレの伴奏が付いています。いや、主役は声楽ではなくその「伴奏」の方だと思えるほど、そのオルガンとコール・アングレという不思議な組み合わせは強いインパクトを放っています。肝心のソプラノ・ソロは、殆どメロディらしいものは歌わせられませんし。しかし、ここで歌っている合唱はかなりの高水準のものを聴かせてくれています。何よりも、音色がとても渋く、ちょっと陰のある彼の作品にとても良くマッチしています。曲の構成もちょっとひねくれていて、オルガンのフルストップでアコードが響き渡ってそこで終わりだと思っていると、そのあとにピアニシモで合唱が延々と「アーメン」とか繰り返すのですが、そこの繊細な演奏はとても印象的です。
実は、この中の1曲だけは、以前にも聴いたことがありました。それは「レクイエム・エテルナム」という、8声から12声の混声合唱のためのア・カペラの作品です。前に聴いて時にはたぶん演奏のせいで殆ど印象に残らなかったのですが、今回はちょっとした戦慄が走るほどの体験を味わいました。おそらく、この合唱団の均質な響きが、この作品の真の価値を知らしめてくれたのでしょうか、それはまるで、クリトゥス・ゴットヴァルトが16声部の合唱のために編曲したマーラーの「私はこの世に捨てられて」(@リュッケルト)のようなテイストを持っているものでした。その中で、和声はマーラーよりもさらに精緻なきらめきを放っています。思いがけず、また一つ、好きな曲に出会えたな、という喜びを与えてもらえました。
もう一つ、最後に収められている有名な「主よ御許に近づかん」というコラール(「賛美歌」と言った方がいいのかも)を元にしたソリスト、合唱、オルガン、そしてフルートのためのカンツォーネも、素敵な曲でした。その演奏の前に、指揮者のマイヤーが編曲した原曲をア・カペラで聴かせてくれるのですが、それとセットで味わうと、この曲の魅力がさらに増す、という粋な計らいも加わっています。つまり、ここまで聴いてくると、カルク・エラートの作風にも次第に慣れてきて、それがついにはかけがえのない魅力につながってきた、ということなのでしょうか。人間、決して顔だけで判断してはいけません。

CD Artwork © GENUIN Musikproduktion, Leipzig
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by jurassic_oyaji | 2009-04-03 20:56 | 合唱 | Comments(0)