おやぢの部屋2
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Le Sacre Debussy-Stravinsky
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Andreas Grau(Pf)
Götz Schumacher(Pf)
NEOS/NEOS 20805(hybrid SACD)



SACDのフォーマットは、DSDという、PCMとは異なるデジタル録音の方式によっています。しかし、それはあくまでSACDのためのマスタリング(オーサリング)の段階での話、元の録音は必ずしもDSDであるとは限りません。PCMもあり得ますし、もちろんアナログ録音もあります。しかし、実際にそこまでの表示が製品になされているかというと、それは極めて曖昧なものです。良心的なものはきちんとどんなフォーマットで録音したかということまで記載されていますが、明らかにPCM録音なのにDSDのロゴが入っていたりしますから、油断はなりません。おそらくそのロゴはSACDへの記録方式を表示してあるものであり(ですから、当然DSDとなります)、元の録音に関する記載ではないのでしょうね。
このSACDの場合は、きちんと「24bit/48kHz」で録音された、という表記がありますから、その点は正直です。つまり、普通のCD(16bit/44.1kHz)よりははるかに高いスペックで録音されているので、それをDSDにコンバートしても充分CDよりは高いクオリティが保証される、ということになります。もっとも、DSDと同等のクオリティを得ようとすれば、サンプリング周波数は、倍の96kHzまで必要になるのでしょうが。
そんな良心的(というか、それが本来の姿)なレーベルからの、ピアノ・デュオのアルバム、演奏しているのはなんと15歳と16歳の時からペアを組んでいて、すでに30年近くのキャリアが続いているというグラウとシュマッハーのコンビです。この2人の演奏、まさにデュオとしての理想的なものを作り上げているのでゅおないでしょうか。お互いの音は全く同質、まるで腕が4本ある一人の人間が弾いている、といったような驚異的なものがあります。その「4本」の腕が作り上げる完璧なタイミングを聴いていると、本当にそんな生き物がいるような気になってきませんか?(ちょっと気持ち悪いかも)
そんな、まさに同一人格化した二人の音色やタッチは、とてもまろやかで、ここで演奏されているドビュッシーや、そしてストラヴィンスキーが、とてもやさしいものに感じられます。
お目当ては、もちろん「春の祭典」です。そういうちょっとおとなしめのセンスで演奏される「春の祭典」の4手版は、しかし、オーケストラ版の荒々しさとは全く別物の、もっと作品のかたちがはっきり伝わってくるようなものでした。イントロ部分でのバスクラリネットやアルトフルートのように、オケの中ではほとんど聞こえてこないような、それでいてとても複雑なことをやっているパートがくっきりと一つの声部として聞こえてきます。トゥッティで激しく刻まれるパルスも、オケの量感よりは、リズムの確かさ、という面が際だって感じられます。
それと同時に、驚くことに、彼らの演奏では、オケで演奏した場合にはまずあり得ない「呼吸」の瞬間を味わうことも出来たのです。曲の最後近く、「祖先の儀式」の部分でアルトフルートによって延々と吹かれる単純なパターンでは、フルート奏者はオケ全体の流れを壊さないために何とかしてブレスをごまかそうと苦労しているのでしょうが、この4手の生き物は、そこに見事な「間」を設けて、生身の人間が演奏している音楽を見せてくれているのです。
そもそも、このバージョンはそもそもはバレエ・リュスでのリハーサルや、その前の振り付けのプランのために用意されたものでした。作曲者自身もコンサートで演奏することは想定してはいなかったものですから、最初に公開の場で演奏されたのは、作られてから50年以上も経った1967年のことでした。その「初演」を行ったマイケル・ティルソン・トーマスとラルフ・グリアソンの演奏を聴いてみると、同じ部分は実に生真面目な楽譜通りのものになっていました。それから何十年もかかって、やっとこのバージョンも「命」を持つようになったのでしょう。

SACD Artwork © NEOS Music GmbH
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by jurassic_oyaji | 2009-04-05 19:30 | ピアノ | Comments(0)