おやぢの部屋2
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MAHLER/Symphony No.8
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澤畑恵美、大倉由紀枝、半田美和子(Sop)
竹本節子、手嶋眞佐子(MS)、福井敬(Ten)
河野克典(Bar)、成田眞(Bas)
Eliahu Inbal/
晋友会合唱団、東京都交響楽団
EXTON/OVCL-00379(hybrid SACD)



インバルが東京都響の首席指揮者に就任したことを記念しての「お披露目コンサート」が、昨年の4月に行われました。それは、3日連続でマーラーの8番「千人の交響曲」を演奏するというハードなもので、居眠りする人もいたそうです(それは「お昼寝コンサート」)。3日間それぞれの会場がみんな違っていた、というのも面白いところです。初日の28日は上野の東京文化会館、29日は川崎のミューザ川崎、そして30日は六本木のサントリー・ホールという、日本を代表する「大きな」コンサートホールが使われました。そのうちのサントリー・ホールのコンサートの模様は、NHKでも放送されましたね。
今回のSACDは、川崎でのライブ録音です(ただし、ジャケット写真は上野)。テレビで映像を見てしまったのですから、別にわざわざ音声だけのものを買うこともないような気もしたのですが、自称「録音の良さでは定評のある」レーベルですので、NHKの音と比較してみるのもいいかな、と。
確かに、「音」に関しては、かなりのこだわりが見られます。当然SACDなのですが、敢えてマルチチャンネルは入れないで、SACDのレイヤーをめいっぱい使って圧縮しないステレオのデータだけを収めてあるというのです(ということは、普通のSACDの信号には圧縮がかかっているのですね)。それを称して「High Quality SACD」というのだそうですが、なんだか最近流行の素材を吟味したCDという「High Quality CD」と混同しそうなネーミングですね。
それはともかく、やはりその音はNHKの音声とは比べものにならないぐらい素晴らしいものでした。一つ一つの楽器の音が立っていて、非常に存在感を持って迫ってきます。マスとしてのオーケストラの音も、このダイナミックレンジの異様に広いスコアを、見事に再現したメリハリのあるものです。ただ、バランスはあくまで会場のライブ感を優先したのでしょうか、テレビで見たときに気になった「瞑想の神父」役のバスの成田さんだけなにかオフ気味に聞こえていた感じは変わりませんでした。テノールの福井さんなどは必要以上に、それこそ、最後のソロ「Blicket auf」の前の息を吸う音まで聞こえるというのに(本体の歌は、かなり悲惨でしたね)。
演奏は、第1部での合唱が、ちょっと普通の「8番」で聴けるものとは次元の違う、しっかりとした表現力を持っているものでした。この合唱をテレビで見たときには、全員暗譜で歌っているのですごい、と思ったのですが、さすがに指揮者の動きに鋭く反応していることが良く分かります。
ですから、その水準が第2部でも維持出来ていれば、合唱に関してはこれまで聴いたことのなかったようなものすごいものが実現されていたはずでした。ところが、第2部冒頭の本当に繊細の極みのオーケストラに続いて歌われた男声合唱は、なんとも魅力に乏しいものでした。ここでぜひ表現して欲しい「神秘性」のようなものが、そこからは全く感じられないのです。期待が大きかっただけに、これは非常に残念なことでした。この第2部を通して、やはり聴かせて欲しいドラマ性も、なにか中途半端なところで終わってしまっています。
インバルは、いつものように、「声」を出して指揮をしています。その音はこの「優秀な」録音でつぶさに収録されて、正直かなり邪魔。しかし、ライブのステージでそんな「声」に煽られたオーケストラは、まさに信じがたいほどのテンションで、度肝を抜くような演奏を展開していました。ヴァイオリンの矢部達哉やチェロの古川展生のソロも狂気すら感じられる妖しさ、そこには、最初から最後まで、一時も緊張の糸が切れることない熱いマーラーの世界が広がっていたのです。合唱がそれに付いていけなかったことが、かえすがえすも悔やまれます。

SACD Artwork © Octavia Records Inc.
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by jurassic_oyaji | 2009-04-07 23:34 | オーケストラ | Comments(0)