おやぢの部屋2
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VIVALDI/Bellezza Crudel
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Tone Wik(Sop)
Barokkanerne
2L/2L56(hybrid SACD)



オリジナル楽器のフィールドで幅広く活躍しているノルウェーのソプラノ、トゥーネ・ヴィークの、このレーベルでの2枚目のソロアルバムです。今回は、ノルウェーで最初に作られたというオリジナル楽器の団体、「バロッカネルネ」との共演で、ヴィヴァルディの「カンタータ」集です。4曲のカンタータの間に、ファゴット協奏曲とフルート(アルト・リコーダー)協奏曲が演奏されるという趣向です。
「カンタータ」とは言っても、バッハの曲のように教会で演奏されたものではありません。ヴィヴァルディの場合はもっと世俗的、宮廷やホールで演奏された、言ってみればコンパクトなオペラのようなものになっています。ここで聴くことの出来る4曲には序曲も何もなく、ソプラノによるレシタティーヴォとアリアが、そのすべてです。テキストの内容も愛の喜びやはかなさ、あるいは苦しみを歌ったもので、アルバムタイトルも「All'ombra di sospetto(疑惑の陰に)」というカンタータの最後の言葉「むごい美しさよ」から取られています。美しいことは罪なのですね。
ヴィークの写真がブックレットにありますが、それもとても美しいものでした。もはや美しさの頂点(ピーク)は超えたお年頃なのでしょうが、そのブロンドの髪や涼しげな目の中には、確かにかつてさらに美しかった頃の面影がそのままに残っています。
超優秀な録音が売り物のこのレーベル、そのヴィークの声はかなり高い音圧で迫ってきて驚かされます。一瞬ひるんでしまいますが、それはとてもくっきりとした音のかたまり、しばらく聴いているうちにその高い密度が、直接心の中に語りかけてくるような存在感として伝わってくるようになります。彼女の声は、オリジナルのヴァイオリンなどと良く溶け合う、とても素直なものでした。あのエマ・カークビーとは違って、若かりし頃の声は、その美しい容姿とともにほとんど衰えることなく今も維持出来ている、というのが幸せなことです。
ですから、なによりも、ヴィヴァルディ特有の、無機的なスケールなどのような楽器の音型をそのまま声に置き換えることを要求されるという、ほとんど無茶とも思える歌い方を、こともなげにクリアしているのが素敵です。特にアップテンポのナンバーでの軽快感は、感動すらおぼえます。
そして、スローバラードでも、ヴィークはしっとりとした歌を聞かせてくれます。「La farfalletta s'aggira al lume(小さな蝶は光の中をさまよい)」という、通奏低音だけの伴奏によるカンタータの最後のアリア「Vedlò con nero velo(黒いヴェールを見るだろう)」などはその白眉、低音パートとの掛け合いになる下降スケールの正確なイントネーションと相まって、確かな情感が伝わってきます。この曲でのチェンバロのリアルな録音も聴きもの。
協奏曲でもその録音は際立っています。ペール・ハンニスダールがソロをとっているファゴット協奏曲では、バロック時代のファゴットの乾いた軽やかな音がとても魅力的に迫ってきますよ。モダンのファゴットが持っているちょっと押しつけがましいキャラは、そこからは全く感じることは出来ません。これでこそ、とても細かいアルペジオなどから、ヴィヴァルディの持ち味が存分に味わえようというものです。
バロック時代、「フルート」といえば「縦笛」の楽器、つまりリコーダーのことを指しました(だから、「横笛」はわざわざ「フラウト・トラヴェルソ(横のフルート)」と呼びました)。ここでその協奏曲を吹いているアレクサンドラ・オプサールも、目まぐるしいタンギングで鮮やかなヴィヴァルディを聞かせてくれます。
実は、さっきのタイトルの歌詞のあるカンタータにも、こちらはフラウト・トラヴェルソのオブリガートが入っています。トルン・キルビー・トルボというそのトラヴェルソ奏者は、かなり艶っぽい奏法でヴィークの歌を盛り上げています。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2009-04-11 20:26 | 歌曲 | Comments(0)