おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
MOZART/Requiem(String Quartet Version)
c0039487_19225358.jpg




Quatuor Debussy
DECCA/480 1938



フランスのUNIVERSALということで、当初はACCORDレーベルで出る予定だったものが、手に入れてみればなぜかDECCA、こんな風にして由緒あるレーベルが「グローバル化」の波の中で消えていってしまうのでしょうか。そういえばこの前のケント・ナガノのブルックナーにしても、予告では「RCAからの第2弾」とか言っていたものが、出た時にはSONYになっていましたからね。
ペーター・リヒテンタールというベタベタした名前(それは「コールタール」)の人が弦楽四重奏に編曲したモーツァルトの「レクイエム」は、かつてはアグライア・カルテット(STRADIVARIUS/1997年)とクイケン・カルテット(CHALLENGE/2003年)の録音ぐらいしかないレアなものだったのですが、2006年の「モーツァルト・イヤー」を契機に何種類かのものがリリースされたようです。そんな中での、知る限りでは5番目の録音となるのが、このCDです。
1780年に現在のブラティスラヴァ、当時はハンガリーのプレスブルグという町に生まれたリヒテンタールは、ウィーンで医学と音楽を勉強し、後にイタリアのミラノで医者としての生業のかたわら、アマチュアの作曲家として生涯を送りました。モーツァルトの遺族、特に長男のカール・トーマスとは非常に親しかった彼は、この「レクイエム」を始めとして多くの作品を編曲、モーツァルトの伝記なども著しています。彼自身の作品も50曲ほど残されており、曲以外でも「ご婦人のための和声楽」とか、音楽事典なども出版していたそうです。
こちらに書いたように、リヒテンタールの編曲は、おそらくそのまま演奏されているアグライア・カルテットのものを聴いてみると、ただ楽器を置き換えただけのような気がして、それほどの魅力が感じられるものではありませんでした。しかし、クイケンたちのものでは、かなり楽譜に手が加えられていたようで、確かに弦楽四重奏の編成で聴いても、違和感なく「レクイエム」の精神が伝わってくるものとなっていましたね。
今回のドビュッシー・カルテットの録音でも、やはり彼ら自身によって改訂が施されています。例えば「Lacrimosa」では、モーツァルトが最後に書いたとされる部分、半音進行でだんだん音が高くなってクライマックスを迎えるところで、オリジナル(編曲前のジュスマイヤー版)にはない細かい音符に変わっているのには驚かされます。このたたみかけるようなリズム、しかし、それは、なぜかクイケンと全く同じリズムなのですね。楽譜がないのでなんとも言えませんが、もしかしたらこれはアグライアの最初の録音では、リヒテンタールの指示に従わないで元の形に戻して演奏していたのかもしれませんね。そういう疑わしい部分ではなく、もっとはっきり分かるのは、間奏を挟んでこの楽章の最初のテーマが現れるときに、1オクターブ高く演奏されていることです。クイケンもそんなことはしていないので、これはドビュッシー・カルテットの独自のアイディアなのでしょうが、これが非常に効果的なのですよ。ファースト・ヴァイオリンの高音が優しく響き渡るときに、ある種の安らぎが感じられるのは確かなことです。
そんなアレンジにも現れているように、彼らの演奏は「歌」を大切にしたとても暖かい肌触りを持ったものです。優しく包み込むようなそんな感触は、合唱ではなく重唱で歌われる「Recordare」や「Benedictus」で、最良の結果が現れています。オリジナルの歌手たちではまず不可能な緊密なアンサンブルからは、これらの曲が秘めていた透明な魅力が最高の形で伝わっては来ないでしょうか。中でも「Benedictus」の美しさといったら。もちろん、これはジュスマイヤーが作ったものなのですが、モーツァルトの「真作」よりも美しいと感じられたのは、なぜなのでしょう。実はこの曲の途中で、メンバーのテンションがはっきり落ちて、急に素っ気なくなるところがあります。彼らもこれを弾いていて「こんなに美しいはずがない」と感じてしまったのかもしれませんね。

CD Artwork © Universal Music Classics France
[PR]
by jurassic_oyaji | 2009-04-17 19:22 | 室内楽 | Comments(2)
Commented by ちくりん at 2013-03-19 22:39 x
Air Franceの機内で聞いて、CDを頼みました。
弦楽四重奏があること自体知らなかったくらいなので、「解説」大変参考になりました。
Commented by jurassic_oyaji at 2013-03-19 23:20
ちくりんさん、コメントありがとうございました。
お役に立てて幸いです。