おやぢの部屋2
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RAVEL/ L'Enfant et les Sortilèges
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Magdalena Kozená(L'Enfant)
Nathalie Stutzmann(Maman etc.)
Simon Rattle/
Rundfunkchor Berlin
Berliner Philharmoniker
EMI/2 64197 2



ふつう、「オペラ」といえば、少なくとも2時間以上はかかるものと相場が決まっています。最初から最後まで退屈しないで見て(聴いて)いられるものなんて、まずありません。「ラインの黄金」などは全く休憩なしに2時間半ですからたまったものではありませんよね。しかし、ご安心下さい。このラヴェルの「子どもと魔法」というオペラは、ほんの45分程度で終わってしまう作品なのですから。しかも、これは最初から最後まで奇想天外な出来事が絶え間なく繰り出され、とても退屈しているヒマなどありません。なにしろ、子ども部屋にある全てのものが(壁紙や、「火」までもが)、いっせいに命を持って動き出し、歌い出すというのですからね。
そんな楽しいお話にラヴェルが付けた音楽は、やはりとても楽しいものでした。ここからは、「オペラ」というよりは、まるでディズニーのアニメのような音楽が連想されはしませんか?「音の魔術師」と呼ばれているほどのラヴェルのことですから、オーケストレーションはとても魅力に富んでいます。編成自体は非常に大きなもの、木管楽器は3本ずつ、クラリネットだけはE♭クラとバスクラも入りますから4本必要です。そして、数多くの打楽器の他に、シロフォン、チェレスタ、ハープといった特殊楽器も入ります。さらにもう一つ、ピアノ・リュテアル(Piano luthéal)という、聞いたこともないような楽器まで使われていますよ。知ってました?ピアノ・リュテアル。植木等じゃないですよ(それは、「なんである、アイデアル」)。
楽器のことは知らなくても、それが出てくるところで、非常にインパクトのある音が聞こえてきますから、すぐ分かります。それは、宿題を全然やらないで怠け惚けていた「子ども」が、「お母さん」にしかられて、お仕置きに砂糖の入っていないお茶や、パサパサのパンしかもらえないことにキレて、部屋中のものに当たり散らしたあとで、突然肘掛け椅子やソファーが動き出すシーンで出てきます。
このラトル盤では、最初はチェンバロを使っているのかな、と思いました。そのぐらい、今このサイトでは静かなブームの「モダン・チェンバロ」と良く似た音だったのです。しかし、いくら「モダン」といっても、チェンバロにしてはあまりに音が大きすぎます。そこで、Durandのサイトにあったカタログの中の楽器編成を見て突き止めたのが、この楽器だったのです。
それは、どうやら「プリペアド・ピアノ」のようなものなのだそうです。つまり、ピアノの弦(もしかしたらハンマー)に細工をして、ピアノとは全く異なる音色を出すようにしたものです。そういう「楽器」は、あのジョン・ケージが「発明」したと言われていますが、それよりももっと前に、全く同じ発想の楽器を、すでにラヴェルは使っていたのですね。
そんなにいろいろな楽器が使われている大編成のオーケストラにもかかわらず、そのサウンドは厚ぼったい感じは全くない透明なものになっているのですから、それもやはりラヴェルのセンスの賜物なのでしょうね。
キャストは、ラトルの人選であればコジェナーを外すことは出来ません。おそらく、音楽的にはこの緻密なオーケストラに拮抗するだけの力量は間違いなく備えていることでしょう。しかし、なんといってもフランス語のディクションがあまりにも稚拙なために、「フランス風」の粋な肌触りがなくなってしまっているのが惜しいところです。まるで男声かと思うような太い声のシュトゥッツマンも同じこと、「凄さ」はあるものの、それが「心地よさ」にまではつながらないのが、ラトルのチームの限界なのでしょうか。
そんな中にあって、サイモン・ハルジーの指揮するベルリン放送合唱団は、とても柔らかい、まさにラヴェルにふさわしいハイセンスな響きを醸し出しています。

CD Artwork © EMI Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2009-04-24 19:47 | オペラ | Comments(0)