おやぢの部屋2
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BACH/Messe en Si mineur
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谷村由美子(Sop), Valérie Bonnard(Alt)
Sébastien Droy(Ten), Christian Immler(Bas)
Michel Corboz/
Ensemble Vocal de Lausanne
Ensemble Instrumental de Lausanne
MIRARE/MIR 081



今年のバレンタインデーに75歳の誕生日を迎えた宗教音楽界の重鎮ミシェル・コルボ、パン作りのかたわら(それは「酵母」)まだまだ元気にコンサートや録音活動を行っています。日本にもたびたび来訪、最近の「ラ・フォル・ジュルネ」ではもはや常連です。そして、この音楽祭の今年の演目である「ロ短調」の最新録音が、極めて関係の深いレーベルから出ました。今やクラシックの世界でもこんな人目をはばからないプロモーションがまかり通っています。
これを録音した場所は、フランスの鄙びた山中、人口200人という集落の中にある「La Ferme de Villefavard(ヴィルファヴァール農場)」のオーディトリアムです。このコンサートホールはそれこそ農場の納屋を改装したような古ぼけた建物で、お客さんは350人しか入らないのですが、とてもよい響きを持っています。そこで、最近ではジェレミー・ロレルのようにわざわざここまで来て録音を行うようなアーティストもいますね。
このCDで聴く限り、確かにこのホールはとても柔らかく暖かい響きに包まれています。そこに、多すぎないけれど、余韻を味わうには充分な美しい残響が付いて、聴くものを和ませます。確かに、こんなサウンドはコルボの作り上げる優しい音楽にはうってつけ、なぜここを録音会場に選んだのか分かるような気がします。
コルボとともにたびたび日本を訪れているローザンヌのアンサンブルは、そんな響きに助けられて、あくまで柔らかな彼らの持ち味を存分に聴かせてくれています。30人ほどの人数の合唱は決して力に頼ろうとはせず、まるで上澄みだけのはかなさで勝負しているようにすら感じられます。それほどに、なにか限りなく「ピュア」に近いサウンドが、そこからは醸し出されています。もちろん、そんな表面的な美しさを求めたところで、心を打ち震わせられるような音楽が伝わってくるはずはありません。そこに広がっているのは、心地よさはこの上ないものの、訴える力には極めて乏しい空虚なものでした。さらに、「Credo」の中の「Crucifixus」などは、思い切り情感を込めて切々と歌って欲しいところですが、コルボはそんな感情の昂揚はあまり好きではないのでしょう。そこでは、まるで冗談のように感情を抑えた無機的な歌い方に徹しています。このように、時には、あえてドラマ性を排除することさえ厭わないのも、彼のスタイルなのでしょう。
ソリストたちにも、そんなコルボの趣味が反映されているのかもしれません。「バス」のイムラーはかなり軽めの声の人ですし、「アルト」とクレジットされているボナールは、どう聞いてもメゾ・ソプラノ、コルボの音楽には重みのきいた低音よりは、爽やかな高音を聞かせることが求められているのは明白です。本来は「第2ソプラノ」が歌うアリアも、このボナールが担当していますし。ですから、アルトの聴かせどころである「Agnus Dei」は、ちょっと困ったことになってしまいました。低音が全くコントロール出来ないものですから、この大切なアリアが台無しになっています。なぜか「フォル・ジュルネ」にもこの人が来るんですね。
ソプラノを歌っているのは、京都出身の谷村由美子さんです。あいにくソロは1曲もなくなってしまいましたが、アンサンブルでは見事に伸びのある声を聴かせてくれています。これも確かにコルボ好みの声ですね。
オーケストラは、もちろんモダン楽器を使っています。「Quoniam」1曲だけのオブリガートのために参加しているホルンは、珍しいことに見事な装飾を披露しています。また、「Domine Deus」と「Benedictus」でオブリガートを吹いているフルートは、とても力強い主張のこもった演奏。それは、そんな穏やかなコルボの世界を真っ向から否定するようなインパクトを持ったもの、彼(彼女?)らのお陰で、この退屈な演奏の中に、確かなアクセントが与えられることになりました。

CD Artwork © MIRARE
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by jurassic_oyaji | 2009-04-28 23:30 | 合唱 | Comments(3)
Commented by ROYCE at 2009-05-04 00:17 x
こんばんは。いつも楽しく拝見しております。3日にフォル・ジュルネでこの曲を聞きました。Agnus Dei」でのアルトは音程がイマイチ。やはりだめでした。Benedictusのフルートは女性奏者で、存在感がありました。このときだけ、なぜかテナーが、彼女のすぐ横に行って歌ってました。
Commented by jurassic_oyaji at 2009-05-04 11:13
ROYCEさん、お久しぶりです。
フォル・ジュルネは今年も盛り上がっているのでしょうね。
いつかは、行ってみたいものです。
Commented by ROYCE at 2009-05-04 16:36 x
連日、朝9時半から夜11時過ぎまで演奏会がびっしりですね。45分くらいの短いプログラムも多いので気楽に楽しめます。完売が多くて当日券がほとんどないのが玉に傷かと。