おやぢの部屋2
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胡旋舞
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Sharon Bezaly(Fl)
鍾耀光/
臺北市立國樂團

BIS/SACD-1759(hybrid SACD)



なんか、すっごくかっこいいジャケットじゃないですか。中国を舞台にしたアクション映画みたいな感じですね。「ドラゴンボール・エヴォルーション」とか。そうなると、ここでフルートをまるで剣のように構えて女忍者っぽく決めているシャロン・ベザリーは、さしずめプルマ役のエミー・ロッサムでしょうか。
もちろん、これは映画のDVDではなく、れっきとした音楽SACDです。水墨画と漢字でデザインされているのは、ここで演奏されているのが中国、正確には台湾の音楽だからです。ベザリーのフルートと「國樂團」とのコラボレーション、彼女もまた、ものすごいところにまで手を伸ばしたものです。ちなみに、ベザリーは漢字では「莎朗・貝札莉」になるんですって。
中国の民族的(伝統的)な楽器というと、ちょっと前に流行っていた「女子十二楽坊」あたりを思い浮かべればいいのではないでしょうか。ただ、中国の場合、日本の伝統楽器とは決定的に異なる部分があることは、注意しておく必要があるでしょう。日本の場合、例えば雅楽などで用いられる伝統的な楽器というのは、作られた、あるいは外国から渡来したその最初の形がそのまま現在まで伝えられています。言ってみれば「オリジナル楽器」で、それこそ正倉院などに残っている1000年以上前の楽器と同じものを、今でも用いて演奏しています。それに対して、中国では昔の楽器がそのままの形で伝えられることはなく、その時代の演奏の要求に応じて徐々に「改良」されてきているのです。それこそ「モダン・ヴァイオリン」のように、より機能的に「進歩」しているのが、現在の中国に於ける「伝統楽器」なのです。中には、19世紀にヨーロッパから伝わったツィンバロンが原型の「揚琴」などという楽器もありますし。
「女子十二楽坊」がそうであったように、そのような楽器を集めた「國樂團」、つまり中国オーケストラは、ヨーロッパの現代楽器(さらには電子音源)ともなんの違和感もなくアンサンブルが可能になっています。おそらくチューニングももはや民族的な音律ではなく、平均律に近いものになっているのかもしれません。
このオーケストラの指揮者でもある鍾耀光の作品では、そんな完璧に西洋音楽を再生するツールとして民族楽器をとらえた、まさに西洋音楽としての語法が展開されています。ベザリーのために作られ、この録音が世界初演となる「フルートと中国オーケストラのための協奏曲」からは、和声といい旋律といい、まるで近代フランスの作品のようなテイストさえ感じられないでしょうか。「國樂團」の響きも、ひたすら西洋の楽器の模倣に努めているように感じられます。二胡はヴァイオリン、琵琶はヴィオラといった具合、もしかしたらそのひたむきさは、ヴァイオリン・パートをクラリネットで代用するといういわゆる「ブラスバンド」などよりも、よほどオーケストラに近いものを実現させているのではないか、と思われるほどです。循環呼吸を駆使したベザリーの名人芸と相まって、これは民族性を超越した普遍的な作品として存在しています。
その反対のケースが、馬水龍という人が元々は西洋のオーケストラと中国の横笛のために作った協奏曲を、「國樂團」とピッコロという、それぞれ別の文化圏の楽器に置き換えたものです。そこでも、「國樂團」は見事にオーケストラの代役を演じています。
そんな面倒くさいことを考えなくとも、いかにも「中国」丸出しのノーテンキな小品も用意されているこのアルバムで、この国の人たちが自らの民族音楽と西洋音楽との間で折り合いをつけたある種の「結論」を味わってみようではありませんか。そこからは、あまり細かいことには拘泥しない(「こうでいなくっちゃ」とは考えない)おおらかな民族性のようなものが見えては来ないでしょうか。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2009-05-04 19:58 | フルート | Comments(0)