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The Glenn Gould Bach Collection
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Glenn Gould(Piano, Harpsichord, Harpsipiano)
SONY/SIBC 129(DVD)



亡くなってもはや四半世紀以上経ったグレン・グールド、最近では、音だけでは物足りないのか、生前に残した映像(当たり前ですが)までもが、映像ソフトとして市販されるようになっています。カナダの放送局CBCの番組に出演した膨大なアーカイヴは、1992年にはレーザー・ディスク、そして昨年一斉にDVDとして市場を賑わしたのでした。
これは、そんな映像の中からグールドがバッハを演奏したものだけを集めた超お得なコンピレーションです。「動く」グールドが132分も収録されているというのに、価格は税込みでたったの2100円、1957年から1969年までの「歴史的」な映像を、たっぷり楽しむことにしましょう。
いかにも「時代」を感じさせるのが、1957年に演奏されたピアノ協奏曲第1番です。スタジオには当時のことですからかなり大きな編成のオーケストラが入っているのですが、なぜかハープやティンパニ、そしてバスドラムなどが、きっちり奏者付きで並んでいるのですよ。もちろん、この曲でこれらの楽器が使われることはありませんから、打楽器奏者などは何もしないでずっと立ちっぱなしなのですが、これはいったい何だったのでしょうね。
この中で、いろいろの意味で聴き応えのあったものは、1962年にたぶん同じ時に収録されたカンタータ第54番とブランデンブルク協奏曲第5番、そして「フーガの技法」のコントラプンクトゥス第4番です。グールドが演奏しているカンタータなんて、まさに珍品中の珍品ではないでしょうか。ここで彼は、指揮をしながら通奏低音として「ピアノ」を弾いているのですが、その音色がなんだかとてもチェンバロに似ているのに、まず驚かされます。見た目は全く普通のグランドピアノ(というか、セミコン)です。もしかしたら、この時代にはスタインウェイもモダンチェンバロを作っていたのか、などと思いを巡らしてクレジットを見てみると、そこには「ハープシピアノ」と書かれていましたよ。調べてみたら、これはグールドの造語で、普通のグランドピアノのハンマーのフェルトに何か金属を打ち込んで、チェンバロのような音を出せるように改造した楽器なのだそうです。ちょっと前にラヴェルの「子供と魔法」のところでご紹介した「ピアノ・リュテアル」と同じようなものなのでしょうね。録音のせいもありますが、チェンバロと言うよりはホンキー・トンク・ピアノのように聞こえてしまうのが難点です。
曲が始まると、ソリストがおもむろに歩いて現れるというクサい演出、それが、ラッセル・オバーリンだったのにはまたびっくりです。こんなところでお目にかかれるとは。アルト・ソロのための、アリアが2曲とその間のレシタティーヴォだけというコンパクトなカンタータ全曲を、おそらくこの時でしか実現できなかったような不思議なサウンドで味わう楽しみ、これだけでもう元を取ったような気になってしまいます。
しかし、そのあとに控えているのが、ジュリアス・ベーカーをソロに起用した「5番」なのですから、なんとも贅沢な話です。この頃のべーカーは、まさに脂の乗りきった旬のフルートを聴かせてくれていますよ。
1969年の映像では、「ハープシピアノ」のようなまがい物ではなく、ちゃんとした「チェンバロ」も弾いています。これも、超レアなシーンですね。しかも、その楽器は、もはや現在では普通に目にすることは不可能なヴィットマイヤーの「モダンチェンバロ」なのですから、二重の意味で貴重な映像です。
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そして、1965年に行われたユーディ・メニューインとのヴァイオリン・ソナタ第4番は、まさに2人の巨匠が織りなすドキュメンタリーとなっています。ピアニストに向き合って立っているヴァイオリニスト、お互い暗譜なのに、決して顔を見合わすことはなく、それぞれが自分の中で音楽を完結させているという、途方もなく冷ややかな世界が広がっている、これは希有なセッションの記録です。

DVD Artwork © Sony Music Japan International Inc.
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by jurassic_oyaji | 2009-05-12 23:27 | ピアノ | Comments(0)