おやぢの部屋2
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Yevgeny Mravinsky in Moscow
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Yevgeny Mravinsky/
Leningrad Philharmonic Orchestra
PRAGA/PRD/DSD 350 053(hybrid SACD)



ムラヴィンスキーとレニングラード・フィル(当時)が、1959年にモスクワ音楽院大ホールで行ったコンサートの「ステレオ」の、未発表録音があったそうなのです。そのアナログ録音のテープをDSDでデジタル変換、SACDでリリースしたというのは、そんな貴重な記録を最高のコンディションでリスナーに届けたい、という、レーベルの熱い思いのあらわれなのでしょうか。
ここに収録されているのは、「コンサート」の最初に演奏されたウェーバーの「オイリアンテ」序曲を除く、シューベルトの交響曲「第8番」(もちろん、演奏当時の表記を尊重しているのでしょう)「未完成」と、チャイコフスキーの「交響曲第4番」です。
ロシアでステレオのレコードが発売されたのは1962年のことですから、この1959年のステレオ録音というのがどの程度のものなのか、興味津々で聴き始めることになります。しかし、「未完成」はやはりその当時の音、という感じは隠せません。冒頭のオーボエとクラリネットのユニゾンによるテーマが、いかにも時代がかった野暮ったい音であったのには、予想されたこととはいえ軽い失望感が残ります。
しかし、「4番」になったとたん、まるで別物のようにすっきりした音に変わっていたではありませんか。これはちょっとした驚き、なにしろ、アナログ録音特有のヒスノイズさえも聞こえないのですからね。あるいは、マスタリングに際してノイズ除去のようなことを行っているのでしょうか。
しかし、しばらく聴いていると不思議なことに気づきました。この「4番」でのオーケストラの弦楽器の配置は、ムラヴィンスキーが必ず取っていた、ファースト・ヴァイオリンとセカンド・ヴァイオリンを左右に振り分ける「対向型」ではなく、下手からスコアの上の段からの順番に並ぶという一般的な配置のようなのです。「未完成」は間違いなく「対向型」であるのは、1楽章が始まってすぐのヴァイオリンの3度平行が左右から聞こえてくることから分かります。コンサートの途中で配置を入れ替えるなんてことがあるのでしょうか。
実は、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルの「4番」といえば、1960年にロンドンで録音されたDG盤を愛聴していたものでした。フィナーレの常軌を逸したテンポ設定にもかかわらず、決して崩れることのないレニングラード・フィルのアンサンブル能力には、舌を巻いた覚えがあります。このDG盤は彼らが初めて西側のレーベルにステレオ録音したといういわく付きのものなのですが、ここでおそらくエンジニアからの要求だったのでしょう、ムラヴィンスキーは渋々「一般の配置」を取って(取らされて)録音しているのです。
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ここで、ある疑惑が持ち上がりました。そんなことがあるはずはない、と思いつつも、「もしや」という気持ちには逆らえずこのPRAGA盤をDG盤(00289 477 5911)と比較してみたら・・・なんと、それは全く同じものだったのです。まず、演奏時間の比較から。これは、ジャケットに記載されている時間ではなく、実際に楽章の頭の音が出てから最後の音が消えるまでの時間です。

  • 第1楽章:PRAGA/1090秒 DG/1114秒 ∴D/P=1.022
  • 第2楽章:PRAGA/540秒 DG/552秒 ∴D/P=1.022
  • 第3楽章:PRAGA/339秒 DG/346秒 ∴D/P=1.021
  • 第4楽章:PRAGA/460秒 DG/470秒 ∴D/P=1.022

秒単位の比較ですから、有効数字は小数点以下2桁ぐらいで十分でしょう。ですから、DG盤はすべての楽章で正確にPRAGA盤の「1.02倍」の演奏時間になっていることになります。つまり、DG盤をアナログテープで2%速く再生したものがPRAGA盤であることになります。そうなると当然ピッチが高くなることが予想されますが、実際にチューナーで測ってみるとDGではa=442Hzだったものが、PRAGAでは見事にa=446Hzになっていました。これは、続けて聴けば普通の人でもはっきり分かるほどの違いです。
もう少し「情緒的」な比較もしてみました。まず、第2楽章の冒頭のオーボエ・ソロです。両方ともかなり聴きづらいチリメン状のビブラートがかかっていますが、表現は淡々としたイン・テンポが基本のものです。そして、明らかに特徴的な5つのポイントが、ことごとく一致しています。丸1では軽いアッチェレランド、丸2と4では拍を無視したブレス、丸3と5では音を長目に吹いています(丸5はかなり極端)。
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もう1箇所は、第3楽章の中間部、ピッコロの超絶技巧が終わった197小節目のAsの音。このパターンは2回繰り返されるのですが、この2回目の最後の音だけ出し損なっています。DG盤では2分58秒、そしてPRAGA盤では2分53秒付近で確認出来るはずです。
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もう全く疑問の余地はありません。この「4番」は、ジャケットに明記されているような「1959年4月24日にモスクワで録音」されたものなどでは決してなく、1960年の9月14日から15日にかけてDGの手によってロンドンで録音されたものに、ほんの少し手を加えたものだったのです。これがアウト・テイクだったりすれば少しは救われるのかもしれませんが、おそらくDG盤のCDからの板起こしなのでしょうね。こんなお粗末な「偽装」が、ついにレコード業界にも波及してきたなんて。いや、もしかしたらすでにそんな「汚染」が蔓延しているのが、この業界なのかもしれませんね。ちなみに、この「偽物」を国内で販売しているのは「キングインターナショナル」という会社です。もうジタバタしないで、納めるものを納めてしまった方がよいのでは(それは「ネングインターナショナル」)。

SACD Artwork © Praga Digitals

(2013/11/7追記)
iPhoneのアプリで「Shazam」という、実存の音源と照合して、その音源を特定する機能を持つものがあるので、それで照合させてみました。
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使ったのは、このPRAGA盤、シングルレイヤーSACD、ノーマルCD、ハイブリッドSACDです。
その結果、全てのものについて、各楽章が同じものとマッチしていました。
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第4楽章だけがちょっと意味不明ですが、もしかしたらこのコンピにDG音源が紛れ込んでいたのかもしれませんね。
いずれにしても、これでPRAGA盤とDG盤は、全く同じであることが証明されました。
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by jurassic_oyaji | 2009-05-18 22:04 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by roi ubu at 2009-05-18 23:56 x
PRAGAのムラヴィンスキーといえば、ショスタコーヴィチの偽装が有名ですが、まだ懲りずにやってるんですね。
ヒストリカル系以外には良いものもあるので残念です。
Commented by jurassic_oyaji at 2009-05-19 07:59
roi ubuさん、こちらではお久しぶりです。
しかし、こんなバレバレの偽装ではなんのメリットもないことに気づかないのでしょうかね。