おやぢの部屋2
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Slåttar på tunga
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Berit Opheim Versto
2L/2L46SACD(hybrid SACD)



ノルウェーのマイナーレーベル「2L」は、本当に手作りの「マイナー」さがまだ保たれているところなのでしょうね。品番が通し番号になっているようですが、今までにリリースされたアイテムはせいぜい60枚程度でしょうか。これの一つ前の番号は、確かグリーグの合唱曲集でしたね。
内容もなにも分からずに、ひたすらこのレーベルの音の確かさだけをあてにして買ってしまったSACD、もう一つの魅力は、このジャケットにありました。どうやら4人のメンバーによるア・カペラっぽい感じがしませんか?代理店のインフォにも、「楽器の音を口で再現」みたいなコメントがあったような気がしますし、それだったら「ボイパ」を駆使した小気味よい合唱が聴けるのでは、と楽しみに入荷を待ちます。
しかし、入荷予定日をはるかに過ぎた頃に手元に届いたこのアルバムには、どうもアーティストは1人しか居ないようなことが書いてありました。写真に写っている4人分の顔も、よ~く見てみると逆さづりになったり下を向いたりしているのは、なんだか同じ人のような気がしてきましたよ。そう、確かに、ここで歌っているのはベーリト・オプハイム・ヴェシュトという女性1人だけだったのです。ちょっとがっかり、こういうのも「偽装」と言うのでしょうかねぇ。まあ、でも、中には多重録音で2人、あるいは4人分の声が入っているトラックもあることですし、許してあげましょうか。「早回し」もしてないようですしね。
そんなことよりも、やはりこのレーベルの録音には期待を裏切られることはありませんでした。教会で行われた録音、たった1人で歌っているのに、そこには適度な残響が伴ったとてもリアルな「声」がありました。そう、これはまずヴェシュトさんの「声」のとびきり豊かな音色を楽しむアルバムだったのです。基本的に彼女のフィールドは「民族的」な音楽、発声もクラシックからはかなり離れたものですが、その「地」の声が持つ美しさには圧倒されてしまいます。低音はちょっとはかなさが伴った怪しいものがありますし、高音はそれとは全く対照的なクリアな明るさがあるのですからね。なんでも、彼女は2005年と2006年にノルウェーとスウェーデンで行われた「フォークオペラ版『魔笛』」(それがどういうものなのかは、ライナーの説明だけでは分かりませんが)のツアーで、夜の女王とパパゲーナを歌ったのだそうです。この二つのロールは同時に出てくるシーンはありませんから、一人二役だったのでしょうか。衣装も同じだったりしたら笑えますね。いや、確かにこれらの役を充分に歌えるだけの高音の美しさとテクニックは持っていますよ。
ここで彼女が歌っているのは、「スロッテル」というノルウェーの民族音楽です。車には関係ありません(それは「スロットル」)。本来は踊りの伴奏をするためにフィドルなどで演奏されるインスト・ナンバーなのですが、楽器を弾く人がいない場合にそれを「声」で代用するという伝統があるのだそうです。そんな、昔から伝わる「芸」の、さまざまな形のものがここでは堪能できます。とてもリズミカルで、まさに踊りの伴奏にふさわしいものの中には、ちょっとしっとりとした子守唄風のナンバーもあって、単調さからも免れていますし。
そんな、トラック11の「Bygdatråen」あたりを聴いていると、それこそグリーグの「ソルヴェーグの唄」とよく似たテイストが感じられます。面白いのが、ヴェシュトさんが取っている長調だか短調だか分からないような民族的な微妙な音程です。これは日本民謡にもよく見られる、「クラシック」の音階には当てはまらない音程なのですが、おそらく「ソルヴェーグ」のもとになった民謡も、そんな音程のものだったのではなかったか、という気がしては来ませんか?グリーグは、それを前半は短調、後半は長調にして、「クラシック」との折り合いをつけたのだ、と。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2009-05-24 22:28 | 歌曲 | Comments(0)