おやぢの部屋2
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Djonki don
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Nordic Voices
AURORA/ACD 5055(hybrid SACD)



またものすごいヴォーカル・アンサンブルを見つけてしまいました。「ノルディック・ヴォイセズ」という、1996年に結成されたノルウェーの6人組のアンサンブルです。メンバーは女声3人、男声3人、それぞれノルウェー音楽アカデミーか、オスロ・オペラ・アカデミーを卒業したという「プロ」の音楽家ばかりです。ただ、メンバーの音楽的なバックグラウンドは多様で、合唱だけではなくオペラや指揮、そして作曲などのジャンルにわたっているのだそうです。実際、このアルバムの録音のあとで、この6人のオリジナル・メンバーのうちの一人、ベース担当の人は、しばらく作曲に専念したいということで、一時他のメンバーに替わっているということです。
彼らのレパートリーは「中世」から「現代」までの幅広い時代をカバーしていますが、このアルバムでは「現代」の作品が演奏されています。全部で6人の現代ノルウェーの作曲家の作品、1曲を除いてはすべてこのアンサンブルのために作られた「新作」です。もちろん、全て無伴奏。そう、彼らの活動の最大のものは、そのようにして新しい作品を産み出す、というものだったのです。なんたって、このAURORAというのは、「ノルウェー作曲家協会」のレーベルなのですからね。そんな作曲家たちが合唱音楽の可能性を広げたいというときに、それに応えるだけのスキルと音楽性を備えていたいというのが、彼らの殆ど使命感のようなものなのでしょう。そのテクニックには、とてつもないものがありました。
とは言っても、ノルウェーの現代の作曲家といったらとりあえずニシュテッドぐらいしか思い浮かばないものとしては、ここに現れている人たちは全く馴染みがありません。正直、読み方も分からないぐらいで。そもそも、アルバムタイトルからして、インターネット環境では正確には表示できないものでしたしね。
まず、1曲目のラッセ・トゥーレセンの「Diphonie I」という、テキストをもたないサウンドで勝負、といった感じの曲では、なんと「ホーミー」が使われていたのに驚かされます。台所用洗剤ではありませんよ(それは「チャーミー」)。モンゴルの「倍音唱法」として知られているテクニックですが、ノルウェーの民族的な発声で同じようなものがあるのでしょうか。全員がこの「ホーミー」をきっちりコントロール出来るまでにマスター、それをアンサンブルで聴かせるというのは、ある意味「奇跡」に近いものがあります。この曲の終わり近く、7分22秒あたりで、タイトルの「ジョンキ・ドン」というリズミカルな5拍子のパーカッシブなパターンが聞こえてきます。楽譜にはジャケットのようなスペルで「擬音」が表記されているのでしょうね。
3曲目、ヘンリク・オーデゴールの「O Magnum Mysterium」という馴染みのあるクリスマスのテキストの曲になると、その「ホーミー」が、「声明」と合体しましたよ。世界中の素材を取り入れようという彼らの貪欲な精神には敬服してしまいます。
ところで、日本の仏教寺院のお盆の恒例行事「御施餓鬼会」では、1000軒を超える檀家さんに対してまとめて供養を行うために、最後に10人以上の僧侶が分担して檀家名を読み上げるというシーンがあります。そこにはまさにクラスターにも似た混沌が出現するのですが、5曲目のセシーリ・オーレ
の「Schwirren」という、アルバム中最大の長さを誇る作品で「素」のテキストの朗読が複数のメンバーによって同時に行われたときに、思わずそれが連想されてしまいました。
この中ではコーレ・コルベルグの「Plym-Plym」1曲だけは1967年に作られたものです。しかし、まるで「歌謡曲」のようなクリシェ・コードの引用があったりするこの曲の方が、他の21世紀の作品よりキャッチーに聞こえるのは、なぜなのでしょう。もちろん、「今」の作品に的確に「音」を提供しているこのメンバーのテクニックとセンスには感服させられっぱなし、久しぶりに妥協のない「とんがった」音楽を堪能した気持ちになれたのですが、そこにとどまっていてもいいのか、という声がどこからともなく聞こえてくるのを遮ることは出来ません。

SACD Artwork © Norwegian Society of Composers
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by jurassic_oyaji | 2009-06-01 20:43 | 合唱 | Comments(0)