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SCHUBERT/Music for Flute and Piano
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Uwe Grodd(Fl)
Matteo Napoli(Pf)
NAXOS/8.570754



以前同じレーベルのヴァンハルでご紹介した、ニュージーランドで活躍している、ドイツ人の指揮者兼フルーティストのウーヴェ・グロットの、シューベルト・アルバムです。今回のパートナーはマッテオ・ナポリという、まるでイタリアのヒット曲みたいな名前(それは「待ってよ、ナポリ」・・・あ、そんな曲はありません)のピアニストです。
シューベルトのフルート・アルバムといえば定番の「アルペジオーネ・ソナタ」と「しぼめる花変奏曲」の他に、テオバルト・ベームが作った「6つのシューベルトの歌曲」という、ちょっと珍しい曲が演奏されているのが、ここでの目玉でしょうか。ベームといえば、フルートという楽器を今のような形に改良した人として知られていますね。当然、その曲は彼の作った楽器のために書かれてものです。そういう見方をすると、このアルバムの収録曲は、本来使われるべき楽器がすべて異なっていることに気づかされます。「アルペジオーネ・ソナタ」は、文字通り「アルペジオーネ」というまさにこの1曲のみで音楽史に名前を残している珍しい楽器のために作られたものです。
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これは、チェロのように膝の間に挟んで弓を使って演奏するものの、弦は6本でギターと同じチューニング、指板にはフレットも付いているという、まさにチェロとギターを合体させたような楽器です。あるいは、ヴィオラ・ダ・ガンバに非常に似ている楽器と言えるのかもしれません。それをフルートで演奏するときには、最低音はフルートでは出すことの出来ない低いミですし、重音も出てきますからそれなりの「改変」を行う必要があります。そもそも、音域自体も1オクターブ高くなりますし。現在ではゴールウェイやトレヴァー・ワイなど、多くのフルーティストによる編曲楽譜が出版されていますが、ここではグロット自身の編曲が使われています。
さらに、「しぼめる花」が作曲された頃には、まだベームの楽器は完成してはいませんでした。シューベルトが想定したのはこの曲を作るきっかけとなった友人のフェルディナント・ボーグナーが使っていた、低音のHまで出すことの出来る9キーの楽器だったはずです。
ベームの「6つの歌曲」は、以前はウィリアム・ベネットが1985年に日本で録音したもの(CAMERATA)があったのですが、もう廃盤になっているようなので、おそらくこれが現在入手可能な唯一の録音になるはずです。タイトルの通り、シューベルトの「冬の旅」から「おやすみ」と「菩提樹」の2曲と、「白鳥の歌」から「漁夫の娘」、「セレナード」、「海辺で」、そして「鳩の便り」の4曲が集められています。「変奏曲」というほどの大げさなものではなく、元の歌曲の尺をそのまま保って(ピアノ伴奏はほとんど変わりません)自由に装飾を施した、という仕上がりになっている楽しい曲です。有名な曲ばかりですから、ここでのベームの手の内がとても良く分かる、というのが一つの魅力でしょう。フルートという楽器を知り尽くした人の、フルートをいかに華麗に聴かせるか、というノウハウがこれらの曲の中にはぎっしり詰まっていますよ。ちょっとバランスに問題のあったベネット盤に比べると、こちらはフルートの音がとてもくっきり録音されていますから、そのあたりの「仕掛け」はよりはっきり分かることでしょう。
ピアノ伴奏がスタインウェイとは思えないようなとても柔らかい響きに聞こえるのが素敵です。フルートの方は、かなりリアルな録られかた、あまりに細かいところまで聞こえてしまうので、ちょっと演奏家にとっては辛いところがあるかもしれません。しかし、グロットの低音から高音まで良く響く伸びやかな音は、確かな存在感として迫ってくるものがあります。
ただ、問題は彼のテクニック。「歌曲」ではほとんど目立たないものの、さすがに「しぼめる花」ではその衰えは隠しようもありません。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2009-06-03 20:47 | フルート | Comments(0)