おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Pauer/Concerto for Fagot and Orchestra



Karel Bidlo(Fg)
Karel Ancerl/
Czech Philharmonic Orchestra
SUPRAPHON/SU 3697-2 001



「アンチェル・ゴールド・エディション」というシリーズが、チェコのSUPRAPHONで継続してリリースされています。1973年に亡命先のカナダで亡くなった往年の名指揮者カレル・アンチェルがチェコ・フィルとともに残した録音を、最新のリマスタリング技術で蘇らせようというものです。全部で42枚から成るそのラインナップを見てみると、今まで抱いていたドヴォルジャークやスメタナのオーソリティといったイメージとはちょっと違う、かなり広範なレパートリーにちょっと驚かされてしまいます。マーラーやショスタコーヴィチまで振っていたのですね。
その中で目に付くのが、聞いたこともないようなチェコの作曲家の名前です。チェコ語の表記はアルファベットにアクセント記号のようなものが付きますからすぐ分かります(インターネット環境ではそれが表記できないのが残念です)。カベラーチ、ハヌシュ、ヴォルジーシェク、ヴィツパーレク、マーハ、パーレニーチェク、スラヴィツキー、ボルジコヴェッツ、オストルチル、クレイチー、パウエル、ドビアーシュ、バールタ。どうです、この中に、知っている名前がありましたか?私は、全て初めて聞くものばかりでした。アンチェルは、彼が活躍していた20世紀の半ばには、おそらく、このような同時代の(だと思います)作曲家の作品を積極的に演奏会で取り上げ、録音として後世に残すことをある種のライフワークにしていたのでは、という思いが、この、現在の普通のクラシック音楽のリスナーにとってはまるで暗号のような意味不明の文字の羅列を眺めることによって沸き起こってはこないでしょうか。
あるいは、この中には思いもかけぬ名曲の沃野が広がっているのではないか、という予感のようなものに惹かれて買ってしまったのが、このCDです。イシャ・クレイチーという1904年生まれ(1968年に亡くなっています)の方のセレナーデと交響曲第2番、そして、イルジー・パウエル(「ジリー・パウアー」という表記を見かけますが、それは間違いです)という、1919年生まれでまだ存命の方のファゴット協奏曲が収録されています。いずれも第二次世界大戦の直後に作られたものですが、そこには、音楽史の王道であった中央ヨーロッパのたどった道からは見事に隔離された、スメタナ、ドヴォルジャークから直結している純粋培養のロマン派の世界があったのです。もちろん、それなりに「新古典主義」あたりの洗礼は受けてはいますが、「12音」や「セリー」とは全く無縁の懐かしい響きが、そこにはありました。多少散らかってはいますが(それは「セーリとは無縁」)。
アンチェルがこれほどまでに肩入れしたチェコの「現代」作曲家たち。21世紀の現代に於いてはそれらは完璧に忘れ去られているかに見えます。しかし、当時、大きな流れから見たら辺境の地であったが故にしっかり培われていたロマンティシズム、これは、人間の魂への根元的な訴えかけとなって、再評価されることもないとは限らないという確かな感触を、このCDによって得ることが出来るでしょう。付け加えれば、これらはモノラルも混じった古い録音ですが、リマスターの成果は驚くべきものがあり、古さを全く感じさせないみずみずしい音を聴くことが出来ます。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2005-03-20 19:48 | オーケストラ | Comments(0)