おやぢの部屋2
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BERNSTEIN/West Side Story
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Matt Cavenaugh(Tony)
Josefina Scaglione(Maria)
Nicholas Barasch(Kiddo)
Patrick Vaccariello/
Orchestra
MASTERWORKS BROADWAY/88697-52391-2



ブロードウェイ・ミュージカル「ウェストサイド・ストーリー」は、作られてから50年以上経っていても、未だにミュージカルの古典として世界中で上演され続けています。別のところでレポートしたように、今この時点で「劇団四季」が地方公演の真っ最中、しかも、同じ時期に「本場」ブロードウェイのプロダクションまでが来日して、名古屋や東京で公演を行うというのですから、まさに日本中が「ウェストサイド」一色になっているのです。「メタボ」ほどは騒がれませんが(それは「ウェストサイズ」・・・1回使ったな)。
おそらく、そのブロードウェイ・キャストの来日に合わせて制作されたのが、このCDなのでしょう。録音されたのは2009年の4月、それがもう6月末には輸入盤が手に入る状態になっていたのですから、ものすごい早業ですね。でも、昔からブロードウェイの演目は、初演の何日か後には同じキャストによるレコードが出来ていたといいますから、彼らにとってはなんでもないことなのでしょう。おそらく日本の公演会場でも、このCDが山積みになって、その日の感動を反芻しようというお客さんを待ちかまえていることでしょう。
しかし、1957年のオリジナル・キャスト盤から52年ぶりに作られたこのニュー・ブロードウェイ・キャスト盤は、そんな、ただのお土産以上の価値を持つものでした。
伴奏のオーケストラのメンバーが、すべて記載されているということによって弦楽器はヴァイオリンが7人にチェロが4人という、バーンスタイン(いや、正確にはシド・ラミンとアーウィン・コスタル)のスコアに忠実な人数になっていることが分かります。もちろん、木管楽器も「マルチ・リード」が5人、一人でピッコロからバス・クラリネットまでを持ち代えることが要求されているという、まさにブロードウェイのピットでの編成となっています。弦楽器を増やしたりそれぞれの管楽器を専門の人が吹くという「シンフォニー・オーケストラ」の編成、そしてプレーヤーではないというところに、注目です。ちょっとチープなこのサウンドこそが、まさに劇場で味わえるものなのですから。
もちろん、セリフだけの部分はすべてカットされていますが、それでも音楽の間で語られる必要最小限のセリフは、きちんと収録されています。決闘のシーンの最後に、「マリアーッ!」というトニーの悲痛な叫びが入っている録音なんて、他にはありません。さらに、プエルト・リコのメンバーに極力スペイン語をしゃべらせている、という今回のプロダクションのユニークなところもはっきり分かります。その流れで、マリアとお針子たちが歌う「I Feel Pretty」や、アニタのアリア「A Boy Like That」もスペイン語の歌詞になっています。これが、最後の「Finale」になると、マリアの「Hold my hand and we're halfway there」という歌詞を受けて、なんとトニーがスペイン語で「Llevame para no volver」と歌い、こときれるのです。少なくとも、愛し合う二人の間には国や言語による差別は存在してはいなかったのです。たとえ「劇団四季」であっても、実際にステージを見たことがある人は、そのシーンの記憶と、この言葉の持つ意味によって、間違いなく号泣を誘われることでしょう。
その主役2人は、おそらくしっかりクラシックの教育を受けた人なのでしょう。その卓越した表現力は、かつてのオリジナル・キャスト盤の比ではありません。そしてもう一人、とんでもない逸材が「バレエ・シークェンス」の中の「Somewhere」を歌っていました。そのソプラノは、力強い上にピュアな声、スコアでの名前は「a Girl」という、実際には姿を見せない役なのですが、ブックレットの台本では「Kiddo」とあって男っぽい名前、じつは、このニコラス・バラシュくんはまだ10歳の男の子なんですって。
「お土産」を先に買ってしまったおかげで、東京まで見に行きたくなってしまいました。まだ間に合います。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2009-07-21 19:50 | オペラ | Comments(0)