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MOZART/The Flute Quartets
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Andrea Griminelli(Fl)
Keller Quartet
DECCA/476 5874



レーベルはDECCAでも、制作はイタリアのUNIVERSAL、なぜか、2006年にリリースされたものが今頃日本国内に入ってきました。
グリミネッリと言えば、かつてはあのパヴァロッティのコンサートに「おまけ」みたいに出演していたフルーティストとして、記憶に残っています。時には屋外でも行われることもあったとてつもない聴衆を集めたパヴァロッティのコンサート、甘く力強いテノールのアリアの間に、ゴールドの楽器を抱えたやはり甘いマスクのフルーティストが登場、ブリチァルディやメルカダンテといった作曲家の華やかで技巧的な作品をひとしきり演奏したあと、颯爽とステージから姿を消す、という場面は、多くの映像で誰しもが体験していたことでしょう。パヴァロッティ目当てにコンサートに訪れた人は、あれはいったい何だったのか、と思ったことでしょうね。
グリミネッリは、あの不世出のフルーティスト、ジェームズ・ゴールウェイの教えを受けたこともありました。ゴールウェイはコンサートだけではなく、「マスタークラス」という、フルーティストを対象にした公開のレッスンも数多く行っていました。その中で彼が引き合いに出していたのが、このパヴァロッティだったのです。フルートの表現にはオペラ歌手と共通したものが多いのですが、その中でもパヴァロッティからは特に多くのことが学べる、というのが、彼の信条です。受講生が小さくまとまった表現に終始していると、「パヴァロッティ!」と叫んでもっとスケールの大きな演奏を要求する、というのが、その時の彼の教え方でした。
そんな、言ってみれば「ゴールウェイの師匠」であるパヴァロッティに見いだされ、引き立てられたというのですから、グリミネッリはなんと幸運なフルーティストだったことでしょう。彼はパヴァロッティの元で、きっと多くのことを学んだはずです。
そんな成果が込められているであろう、モーツァルトのフルート四重奏曲のアルバムです。良く知られているように、モーツァルトには弦楽四重奏の1本のヴァイオリンがフルートに置き換わった編成の曲が4曲あります。しかし、ここでは「第5番」として、もう一つの四重奏曲が収録されていますよ。これは、別に新発見の作品ではなく、オーボエ四重奏曲のオーボエパートをフルートで吹いている、というものです。これは、おそらく「師匠」のゴールウェイが1991年に東京クヮルテットと録音を行ったときのアイディアを参考にしたのでしょう。LP時代には「4曲」で1枚にはちょうど良いサイズだったのですが、CDでは「5曲」が標準になるのかもしれませんね。
「1番」というのは、最も有名なニ長調の曲。その冒頭の伸びやかなテーマは、かなり速めのテンポでまさに颯爽と吹かれていて、そこにはイタリア的な心地よい風が吹きます。音色もとても軽やかで明るく煌めいています。まるで、モーツァルトの屈託のない面だけを抽出したような、それは滑らかな演奏でした。共演しているケラー・クヮルテットのメンバーも、同じような軽やかさでフルートを盛り上げています。ただ、しばらく聴き続けていると、何かもう少し心に引っかかるものがあっても良いのにな、という気持ちになってきます。それは、その曲の真ん中のゆっくりとした楽章が、あまりにあっさりしすぎていたせいなのでしょうか。あるいは、彼はこれらの曲のリピートの指示をすべて忠実に守って演奏していますが、そこで繰り返されたものが1回目とうり二つ、これではわざわざ繰り返す意味がないのではないか、と、常に感じられてしまったせいなのでしょうか。あり得ないことですが、それは全く同じものをループにしたようにも感じられるほどでした。いっそ、虫眼鏡(それは「ルーペ」)を使って、調べてみましょうか。
パヴァロッティが、最晩年に「口パク」でミソをつけた轍を、グリミネッリが踏んでいなければいいのですが。

CD Artwork c Universal Music Italia s.r.l.
by jurassic_oyaji | 2009-08-04 23:19 | フルート | Comments(0)