おやぢの部屋2
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VIVALDI/Concerti per flauto
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James Galway(Fl)
Claudio Scimone/
I Solisti Veneti
HARDY/HCD 4039(DVD)



この間、テレビでフルーティストのペーター・ルーカス・グラーフが演奏していましたね。もう80歳になったというのに、技術的には全く衰えが感じられなかったのは、まさに驚異的でした。その上に長年の経験に基づく「味」が加わるのですから、その素晴らしさはたとえようのないものでした。同じぐらいの年齢のはずのオーレル・ニコレが、もうかなり前から無惨に衰えてしまったのとはまさに対照的です。この楽器では、ある年齢を超えてしまったら、能力を維持するのは極めて難しいのでしょうね。あのランパルでさえ、やはり晩年にはぼろぼろの姿をさらしていたものでした。
そうなってくると、最近何かとここで話題になっているゴールウェイの場合はどうなのか、という点が気になるところではないでしょうか。なんでも、彼の場合は「53歳(54歳だったかも)になったら、もう人前では演奏しない」と公言していたのだとか。やはり、あれだけの輝かしいキャリアを、「老い」のためにみすみす棒に振るようなことはしたくなかったのでしょう。しかし、60歳を過ぎてもまだまだ活発に演奏活動を続けているのはご存じの通り、実際に自分がそんな年になっても、「まだいける」と感じられたのでしょうか。ただ、このあたりになると所属レーベルが変わったりして、なかなか新しい録音が出なくなってしまいました。それでも、去年の新譜などでは、いつに変わらぬ健在ぶりを示してくれていましたね。
そんな中で、やはり去年収録されたDVDがリリースされました。もはや70歳になろうとしているゴールウェイの、「今」の演奏シーンが見られるのですから、これはとても楽しみなものです。
実際に手にしてみると、確かに昔と変わらぬ技術の冴えと美しい音を映像で確かめることは出来ましたが、正直「商品」としては期待はずれの仕上がりになっていました。というのも、これはヴィヴァルディゆかりの地ヴェネツィアのドゥカーレ宮殿での演奏、というコンセプトなのですが、ゴールウェイも、そしてバックを務めるシモーネ指揮の「イ・ソリスティ・ヴェネティ」(久しぶりに聞く名前、まだあったんですね)も、そこでは実際に演奏はしていないのですよ。つまり、前もって録音したものを流しながら、それに合わせて演奏している、という「映画」などではよくあるやり方で撮影されているのです。もちろん、撮影の時にも実際に音は出しているのでしょうが、明らかに指がずれていたりすると、なにか感興をそがれてしまいます。その上、パッケージにはその「録音」に関するデータが一切記載されていないものですから、この前のムラヴィンスキーではありませんが、あらぬ疑いも抱きかねません。
ただ、ここで演奏している作品10の協奏曲は、ゴールウェイはシモーネとは録音してはいませんし、昔はおそらく低音にリュート(あるいはテオルボ)やファゴットを加えたりはしていなかったはずですから、この撮影に先だって、どこか別の場所できちんと録音したのは間違いのないことなのでしょうね。でも、正直ヴェネツィアの風景や、宮殿の内装などはどうでも良くて、ちゃんとした演奏をしている映像を見てみたいと思っている人には、これは失望以外の何者でもなかったことでしょう。ジャケットの写真が「裏焼き」になっているのもかわいそう。いくらゴールウェイでも、右手でGisキーを操作するのは大変でしょう。サーカスの曲芸ではないのですから(それは「浦安」)。
1983年にニュー・アイルランド室内管弦楽団をバックに「吹き振り」をした録音に比べると、ここでのゴールウェイには、まさに「巨匠」としての風格が感じられます。例えば、緩徐楽章で行っていた自由な装飾などもさっぱりと放棄しているのも、小技に走らない潔さの表れなのでしょう。この先どこまで「現役」を貫いてくれるのか、楽しみです。

DVD Artwork © Hardy Classic Spa
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by jurassic_oyaji | 2009-08-12 20:08 | フルート | Comments(0)