おやぢの部屋2
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The Mozart Album
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Danielle de Niese(Sop)
Charles Mackerras/
Orchestra of the Age of Enlightenment
DECCA/478 1511



ちょっと前のヘンデルに続いての、ダニエル・デ・ニースの2枚目のソロアルバムの登場です。ちなみに、この人の名前の日本語表記は、せっかく「デ・ニース」で落ち着いたと思っていたら、日本のレコード会社が「ドゥ・ニース」などとやってくれたものですから、またまた混乱の極みに。先日仲間の飲み会で「デ・ニース」の魅力をとうとうと語っていたら、「その『デ・ニース』というのは、『ドゥ・ニース』のことですか?」などと、訳の分からないことになってしまいましたっけ。フランス語の「de」だから、生真面目に「ドゥ」と表記したのでしょうが、彼女は別にフランス人ではありませんから、自分ではフランス語でも英語風に「デ」と言っているのに。彼女によく似たアフリカ系のオスカー女優でHalle Berry(↓)という、やはり美しすぎる人がいますが、これも「ハリー・ベリー」と読む方がより実際の発音に近いのに、未だにスペルにこだわって「ハル・ベリー」と言っている人は後を絶ちません。
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それはともかく、このモーツァルト、「アリア集」となっていないのが嬉しいですね。決して、オペラ・アリアだけにはとどまらないところで勝負したいのでありあす、といういうデ・ニースの心意気のあらわれなのでしょう。最初にモテットの「Exsultate, jubilate」全曲で始まり、最後は「証聖者の盛儀晩課」の中の「Laudate Dominum」で締めくくるという、ラテン語のテキストによる宗教曲で額縁を作っているのも、なかなか粋な構成です。
それに挟まれた「オペラ・アリア」も、あまり有名な曲ではなく、マイナーなコンサート・アリアとか、今では殆ど演奏されることのない異稿を取り上げているのも、ユニークですね。これも、知名度ではなく、その曲が自分の技巧を遺憾なく発揮できるものだ、というあたりが選定基準だったのでしょう。この間ユントゥネンで聴いたばかりの不思議な音程のオンパレードのK528のコンサート・アリア「Bella mia fiamma, addio!...Rasta, oh cara」も歌っていますし、やはり、彼女はただ者ではありません。
ヘンデルではクリスティと「レ・ザール・フロリサン」がバックでしたが、今回は大御所マッケラスの指揮です。オケもイギリスの「エンライトゥンメント管」、こことは、グラインドボーンで共演していましたね。ただ、やはりクリスティとはちょっと勝手が違っているようで、何かと伸び伸びと歌いたがっているソリストを、マッケラスはちょっと押さえ込みにかかっているような場面があちこちに見えてしまっているのが気になります。というよりは、こういうバックで歌われることによって、彼女のキャラクターは、実は「ジューリオ・チェーザレ」で見せていたような軽やかなものではなかったことに気づかされます。「歌って踊れて、その上美人」というイメージは、彼女の一面に過ぎず、もっともっとドロドロに入り組んだ情感のようなものでも表現できる資質を、本当は備えているのでは、という思いに駆られてしまいます。
そうなってくると、このアルバムの中では、オトコに棄てられた恨みとは裏腹に、今でも彼を愛しているという設定のドンナ・エルヴィラが最も魅力的に思えてきます。彼女が歌う「Ah! fuggi il traditor」は、そんな複雑な心のヒダが見事にあらわれた素晴らしいものです。このアリアの最後にある、「普通の」エルヴィラ歌手には難しいコロラトゥーラを軽々とクリアしているあたりが、デ・ニースの最大の武器なのではないでしょうか。
ですから、彼女が同じオペラから、超豪華ゲストのブリン・ターフェルとのデュエットで「Là ci darem la mano」を歌うとき、ツェルリーナはただの小娘ではない、もっと駆け引きに長けたすれっからしになっているはずです。そうでなければ、ターフェルがこれほど入念に手練手管を込めたナンパを仕掛けることもなかったことでしょう。

CD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2009-08-14 21:13 | オペラ | Comments(0)