おやぢの部屋2
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BERNSTEIN/Mass
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Randall Scarlata(Celebrant)
Kristjan Yärvi/
Tonkünstler-Orchester
CHANDOS/CHSA 5070(hybrid SACD)



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Jubilant Sykes(Celebrant)
Marin Alsop/
Baltimore Symphony Orchestra
NAXOS/8.559622-23



バーンスタインが1971年に作った「ミサ」は、作曲者自身が演奏したものが長い間唯一の録音でした。しかし、それから30年以上も経った頃、2003年にケント・ナガノがドイツのオーケストラを使ってこの曲を録音してからは、なぜか相次いで新しい録音が現れるようになりました。まず、今年になって市場に出てきたのは、2006年にクリスティアン・ヤルヴィによって録音されたCHANDOSです。
この曲の編成はかなり巨大です。声楽陣は、「司祭」と呼ばれるソリストが中心になって、ミサの式次、というよりは、このシアター・ピースの「物語」を進行させていきます。そこに男女のソリストが加わります。彼らは「ストリート・コーラス」という少人数のアンサンブルにも参加し、「ロック」や「ブルース」を歌います。その他に大編成の混声合唱と、児童合唱が加わります。器楽は、シンフォニー・オーケストラの中にロックのリズム・セクションが入るという大規模なものです。さらに、前もって録音された音源を、演奏会場を包み込むように配置されたスピーカーから流し、「サラウンド」体験を味わってもらうというのも、当時としては斬新なアイディアだったのでしょう。
おそらく、ナガノにしても、ヤルヴィにしても、この曲に対するアプローチは「バーンスタインが作ったクラシックの曲」というものだったのではないでしょうか。特に、大きな合唱や児童合唱(ヤルヴィ盤ではテルツ)にはどこから見ても「クラシック」の団体を使い、あくまで字義通りの「ミサ」、あるいは「カンタータ」といったくくりで、古典的な名曲と肩を並べるような格調の高さを求めているように思えます。ですから、その中で明らかに「クラシック」からは逸脱した性格を持っている「ストリート・コーラス」のパートが作り出す音楽は、あくまで「異質なもの」としてとらえているのでしょう。ある種、時代の香りを残すスパイスのようなものだ、と。
そんなコンセプトによるこの2種類の録音によって、この作品が「現代」でもなおかつ聴き続けられる理由が理解出来かけた頃、NAXOSからそれとは全く別なアプローチによるオールソップの2008年の録音がリリースされました。国内盤仕様はまだ発売されていないようですが、こちらですでに聴けますので、ワールド・リリースはされているはずです。
この演奏の特徴は、その演奏者、特に声楽陣の選定によってすでにはっきりあらわれています。まず、司祭役のサイクスのとてもクラシックの歌手とは思えないような自由な歌い方(あるいは話し方)はどうでしょう。これは、ケント盤のハドレーやヤルヴィ盤のスカルラータとは、まるで次元の違うパフォーマンス、あちらが変に力んだ嘘くさい「オペラ」だとすると、サイクスはまるで等身大の「ミュージカル」の世界です。最後の最後に歌われる長大なモノローグ「Things Get Broken」などは、まさに生身の人間の心情を吐露しているようなゾクゾクさせられるものでした。そして、「合唱」を担当しているのは、全て黒人のメンバーからなるゴスペル・グループ。彼らのグルーヴは、まさにクラシックの団体とは「別物」の躍動的な生命感を持つものでした。
そう、かつてはミュージカルの劇場のピットの中でも演奏したことのあるオールソップであれば、この作品をあたかも「ミュージカル」のような「非クラシック」ととらえるのはいとも簡単だったことでしょう。そういう視点に立つと、先の録音ではなんとも居心地の悪かった「ストリート・コーラス」のパートが、見事に作品の中のあるべき場所にしっかりはまっていることにも気づかされます。ケント盤を聴いてこの曲を「駄作」だと感じたのは、あくまでそれを「クラシック」だと思っていたからだったことに初めて気づきました。バーンスタインは、どこまで行っても超一流のミュージカル作曲家、決してそれ以上でもそれ以下でもなかったのですね。演歌も作っていますが(それは「与作」)。

SACD & CD Artwork © Chandos Record Ltd, Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2009-08-26 20:55 | 合唱 | Comments(0)